奈良県桜井市高家(たいへ)に10体のお地蔵様が祀られています。
高家という地名からも想像ができますが、ここは遥か北方に若草山を一望できる高い場所にあります。東に三輪山や龍王山を見下ろすという点では、聖林寺本堂からの眺めにも似ていますが、奈良市内の若草山までも視界に収めることができる場所はそう多くはないのではないでしょうか。
高家の峠に立つお地蔵様。
かんかん地蔵とも呼ばれているようです。全国各地にかんかん地蔵は見られますが、お地蔵様の足元を石でカンカンたたけば願い事が叶うのでしょうか。高家の地蔵の足元をよく見てみましたが、そんなに目立ってたたかれた跡は確認できませんでした。
高家の地蔵は六地蔵だったのか
高家の地蔵は元来、六地蔵だったのではないかと言われます。
そう言われてみれば、向かって左の6体が大きくて、右に並ぶ4体が小さいことが分かります。右方の4体は後付けのお地蔵様なのでしょうか。六地蔵といえば、葛城古道にある六地蔵石仏を思い出します。人は死後、地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天の6つの世界のいずれかに生まれ変わると言い伝えられます。六道輪廻の思想が六地蔵には込められています。京都の宇治方面にも、JR六地蔵駅がありますよね。昔から庶民の生活に根付いた所に、六地蔵の居場所が確保されていたのではないでしょうか。
高家の地蔵のすぐ近くに、満願寺の枝垂桜を案内する道標がありました。
満願寺のシダレザクラまでの距離は1.7㎞、聖林寺までは3.1㎞、談山神社までは6.4㎞のようです。聖林寺や談山神社へは何度も足を運びましたが、満願寺の枝垂桜はまだ見たことがありません。来年の花見シーズンには是非訪れてみようと意を新たにします。
高家を訪れた後に知ったのですが、実はお地蔵様の近くに6世紀後半の横穴式古墳である平野古墳が存在していたようです。今回は見落としてしまいましたが、次回は抜かりのないようにご報告できればと思います。
飛鳥資料館の人頭石。
この日は飛鳥資料館の庭が無料開放されていました。この人頭石はレプリカですが、本物は飛鳥の光永寺にあります。数年前に、高取町観覚寺にある光永寺を訪れて、お寺の方の案内で人頭石を見学させて頂きました。
飛鳥資料館を出て、桜井方面へ向けて車を走らせていると、右手に「天空の郷」という看板が目に飛び込んで参りました。以前から気にはなっていたのですが、いつも時間が無かったために素通りしていました。今回は時間に余裕があったので、思い切って右折して山道を登ってみることに致しました。天空の郷というのは、どうやら柿の葉寿司の体験道場のことのようです。色付いた ”紅葉の柿の葉” で包んだ柿の葉寿司で知られるお店ですね。
お地蔵様の赤い前掛けは、やはり魔除けを意味するのでしょうか。
一口(いもあらい)などでもよく言われることですが、峠に立っていることからも、一種の結界を感じるのです。ここから先への伝染病は御免こうむりますといったニュアンスを感じるのです。子供が疱瘡に罹らないように、この場所にお地蔵様を祀ったのではないかと思われます。
たとえ地獄へ堕ちた人にでも、救いの手を差し伸べると言われるお地蔵様。如来のように遠い存在ではなく、より人に近い場所で見守り続けるお地蔵様。そんな仏の慈悲を高家の峠に見ることができます。
高家は旧多武峰寺領に当たり、針道(はるみち)・椋橋(くらはし)・細川と共に多武峰四郷の一つに数えられる場所でした。四郷の中では最も寺に近く、根本所領として直属的な存在であったと伝えられます。
古い高家の歴史を感じながら、奈良県内屈指の景色を楽しんでみませんか。