十輪院地蔵菩薩の三道!首の3本線

十輪院の南門を入ると、すぐ左手に休憩処があります。

お不動さんのお堂手前にある休憩処の中に入ると、十輪院の石仏龕の写真が貼られていました。

十輪院の石仏龕

十輪院の石仏龕。

古代インドのガンダーラを思わせるような石仏龕が、十輪院本堂後ろの覆堂の中に祀られています。

十輪院石仏龕と永代供養墓
地蔵菩薩をご本尊とする奈良市十輪院町の十輪院。 真言宗醍醐派のお寺で、雨宝山という山号を持ちます。吉備真備の長男・朝野宿禰魚養(あさのすくねなかい)が建立した寺院と伝えられます。古い町並みが残る奈良町界隈に位置しており、観光客の姿もちらほら...

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悟りに至る過程を表す三道!見・修・無学のプロセス

石仏龕。

そもそも龕(がん)とは、大自然の中の断崖を掘って仏像を安置する場所のことを意味していました。各家庭にある仏壇なども、壁の窪みの中にすっぽりと納められていますが、あの窪みのスペースも龕と言います。いわゆる厨子のようなものですね。

石仏龕の中に三体並んだ仏像。

それぞれ一体ずつの仏像のお写真も拝見することができました。

石仏龕の地蔵菩薩

真ん中にいらっしゃるのが、ご本尊の地蔵菩薩です。

仏像のふくよかな体つきを表現する、首に見られる三本の横線。

この線は三道(さんどう)と呼ばれ、仏相の一つに数えられます。まるで赤ちゃんを思わせる体の特徴が、仏像のお姿にも刻まれています。よく仏の相を「三十二相八十種好」と言ったりしますが、三道は三十二相の中には入っていないようです。

やはり仏像はふくよかな方が安心感を抱かせます。

苦行時代の釈迦の仏像を見たことがありますが、悟りを開く前の仏像には厳しさは感じられても、満ち足りた充足感を感じることはできません。信仰の対象になる仏像には、やはりふっくらとしていて欲しいものです。

阿弥陀の浄土世界へのガイド役ともされるお地蔵さん。

浄土へ連れて行ってくれる地蔵菩薩は、庶民にとって大変有り難い存在でした。

十輪院境内

十輪院の境内風景。

地蔵菩薩は六道を行き来して、私たちがどこへ行こうとも救いの手を差し伸べて下さいます。たまたま人間道に今居る私たち。天上、人間、修羅、畜生、飢鬼、地獄から成る六道の世界観を思うと、人間道の次なるステージはどこなのか?それは生前の私たちの行いによって決まるとも言われます。

たとえ地獄へ堕ちても、火の海から助け出して下さる地蔵菩薩様。

十輪院は元興寺の境内にあった一つの支院が、今の場所に残されているお寺です。8月に催される元興寺の地蔵盆は、数多くの参拝客で賑わう年中行事ですが、ここにも十輪院とお地蔵さんとの深いご縁が感じられます。

首に見られる三道にも意味があります。

どうやら悟りに至る3ステップを表しているようです。正しく物事を見る「見」、それに基づいて修身する「修」、そして最後にもはや学ぶことが無くなる「無学」の境地へ昇華します。

十輪院の釈迦如来

石仏龕の向かって左側の釈迦如来。

釈迦如来様の首にも三道が見られますね。

右手は施無畏印を結んでおられます。悟りを開いた如来らしく、服装はいたって質素な雰囲気を漂わせます。

十輪院の弥勒菩薩

脇侍のもう一体、向って右側の弥勒菩薩。

こちらも右手で施無畏院を結び、首の所には三道が見られます。

石仏龕の内外には、不動、諸菩薩、天人、二王、四天王の他、多数の五輪塔が彫られています。入口の冠木部分には、七星九曜、十二宮、二十八宿などの星の集団の名が梵字で彫られています。見事なまでの、めくるめく曼荼羅世界が表現されているような荘厳さです。

十輪院魚養塚

本堂の裏手にある魚養塚

昔は歯を磨くために使われていたとも言われるトクサが、魚養塚の前に生えていますね。

十輪院の石仏龕に使われている石は、笠置石(かさぎいし)とも呼ばれる花崗岩です。飛鳥に鎮まる謎の石造物にも花崗岩製のものがたくさん見られますが、その丈夫さゆえに様々なものに加工されてきた歴史が窺えます。

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