神八井耳命(かむやいみみのみこと)を祀る多神社。
その東方の集落内に、真新しい祠と立砂を見つけました。祠は東を向いて建ち、その先には神奈備の三輪山が聳えていました。
田原本町多にある祠。
祠の下にはロゼット葉を広げるガザニアが咲いていました。
数年前にもこの辺りを通っているはずなのですが、その時には無かったように思います。周りに祠の正体を案内する但し書は見当たりませんでした。
立砂は三輪山を意味するのか?姫皇子命神社の東に建つ祠
祠のすぐ背後に当たる西側に、姫皇子命(ひめみこのみこと)神社が鎮座しています。
姫皇子命神社は多神社の境外摂社の一つで、神八井耳命(かむやいみみのみこと)の姫皇女を祀ります。天照大神の若魂を祀るという説もあるようですが、どちらにせよこの祠は、多神社やヒメミコノミコトと深い関係があるでしょう。
東を向く祠。
右手へ回り込んだ先に、姫皇子命神社があります。
祠の周りには三本の木が立っています。残されているということは、御神木の意味合いもあるのかもしれません。そもそも祠とは、「神庫・宝倉(ほくら)」の転訛した言葉です。ホクラが訛ってホコラになったわけですね。神を祀る小さな建物であり、結界を示す鳥居はありません。
背の低いガザニアが、精一杯太陽に向かって花を開かせています。
俗に言うレイライン上に祀られています。
北緯34度32分の聖なる「太陽の道」で、太陽に反応して開花するガザニアがよく似合います。曇天日や日没後は、花を閉じるのがガザニアの特徴です。羽衣菊(はごろもぎく)にも酷似していますが、葉の形からおそらくガザニアだと思われます。
祠の前の立砂(たてずな)。
京都の上賀茂神社で見る立砂を思わせます。
神の出現に由来する”立砂”を見れば見るほど、レイライン上の三輪山を意識します。盛砂(もりずな)とも言いますが、一種の神籬(ひもろぎ)ですね。このなだらかな稜線の立砂は、やはり三輪山を表しているのではないでしょうか。
おや?
千木が外削ぎですね。外削ぎは男神を表す千木です。
この千木から推察するに、姫皇子命神社と言うよりも、むしろ大元の多神社に由来する祠なのかもしれません。多神社には神武天皇や神八井耳命が祀られています。
多神社の境外摂社の中でも、東面するのは姫皇子命神社だけです。そのため、同じように東を向いているこの祠は姫皇子命ゆかりのものだと思いました。ちなみに、多神社の本殿は南面しています。
足元にびっしりと開花します。
横いっぱいに葉を広げるのがロゼット葉の特徴ですが、効率的に太陽光を吸収するのに役立っているのでしょう。
太陽と仲良しのガザニア。
南アフリカ原産のようで、高温を好む植物です。
東面する祠を後にし、そのまま西へ進むと融通念仏宗の念仏寺があります。そこから多集落の会所を過ぎ、その先で近鉄橿原線の線路に出くわしました。
踏切の向こうに三輪山が見えています。
そうこうしている間に、何度か遮断機が下りて通過電車に遭遇します。
踏切道 笠縫第4号の立札。
踏切を越えてさらに西へ進むと、寺川沿いの下ツ道に出ます。下ツ道を少し南へ行くと、多神社の一の鳥居が建っていました。