石燈籠にも様々な種類があります。
利久型燈籠、野面灯籠・山灯籠、春日型燈籠などが知られますが、今回は特徴的な濡鷺型燈籠をご案内します。
大正楼中庭の濡鷺型燈籠。
濡鷺(ぬれさぎ)とは、霧雨の中に一本足で立つサギの姿を意味しています。蕨手を持たずに、笠の軒の部分が横一直線に切れ込んだ姿は、どことなく鷺の姿を思わせます。
濡鷺型を特徴付ける尖った宝珠!中央で膨らむ竿の節
スタンダードな濡鷺型には、火袋の部分に鷺の姿が彫り込まれているようです。
そこで中庭に降り立ち、ぐるりと確認してみたのですがどの面にも鷺の彫刻は見られませんでした。しかしながら、燈籠全体の形は間違いなく濡鷺型です。おそらく変則的な濡鷺型石灯籠もあるのでしょう。
手前左の手水石近くの灯籠が”濡鷺型”です。
一本足で立つ鷺と表現していますが、その脚に当たる竿の中央が膨らんでいますね。
活鯛のあら炊きと石灯籠。
一番手前の灯籠は利久型燈籠でしょうか。笠の下に蕨手が見られます。灯籠各部位の名称に関しては、以前にご紹介済みです。ご興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら、どうぞご参照下さい。
竿の節が中央で膨らみます。
濡鷺型石灯籠の特徴の一つですね。
先の尖った宝珠。
まるで鉛筆の芯のように天へ向かいます。これもまた、濡鷺型ならではの特徴です。概ね宝珠の下には請花が見られますが、濡鷺型には無いようです。六角の露盤がそのまま宝珠を支えています。
露盤の下には笠が掛かります。
広がる笠は六本の筋で区画され、軒に当たる部分は横一線に切り込みが入ります。蕨手のようにくるっと丸まっていないためか、どこか寂しげで奥行きを感じさせます。
火袋の一面には「×」が刻まれていますね。濡鷺型燈籠の火袋は前後に火口が開き、×、+、サギ、雲が刻まれます。
客室の床の間。
さりげなく季節の掛軸が掛かります。
火袋の一面には「三日月」が見られました。
月の下は雲でしょうか。
こちらは月に対する太陽なのかもしれません。
同じくその下には、たなびく雲のような意匠が施されます。
縦にスッと落ち着くデザイン。
他の灯籠に比べて、「独り」を楽しんでいるかのような雰囲気です。
庭の中に小気味いいアクセントを生んでいますね。