三大香木に名を連ねる沈丁花(じんちょうげ)。
春分の日を前に咲き始めていました。
雪見灯篭の前に咲く沈丁花。
開花時期は3月から4月に掛けてと言われます。原産国は中国で、夏の梔子(くちなし)や秋の金木犀と共に三大香木の一つに数えられます。近づいただけではあまり香気も感じられませんが、鼻を近づけてみるとなるほど!と納得の香りがしました。
ジンチョウゲの特徴!沈香に似た香りと丁子に似た花
古代人たちは人の顔のパーツを植物になぞらえたと云います。
目は芽、鼻は花、耳は実という具合にそれぞれの対象として捉えました。漢字の伝来する以前の話で、音が支配する大和言葉の時代です。当時は花を「鼻」に当てていたようです。確かに鼻は顔の先に付いています。福笑いでも中心の鼻が定まらないと、どうも間抜けな顔になってしまいますよね。
大正楼中庭に咲く沈丁花。
十字型の花が丁子(ちょうじ;クローブ)を連想させます。
沈丁花の花もご多分に漏れず、先っぽに付いていることが分かります。
”最初から” を意味する「端(はな)から」なども、同じルーツを持つ言葉とされます。一昔前のタレントにハナ肇(はじめ)さんという方がいらっしゃいましたが、とても理に適った芸名だと思います。
様々な植物が芽吹く季節を迎えます。
希望に満ちた植物の芽ですが、確かにその形は人の目に似ています。
同じ視点に立てば、結実する実も顔の両側に付いている耳に似ているのでしょう。ちなみに葉は「歯」なんだそうです。数多く生え揃う歯は、植物の葉っぱの相似形です。
燦々と太陽光が降り注ぎます。
ジンチョウゲ科の常緑灌木。
毎年春分前後になると、15~6ほどの花を頭状花序に配列して開かせます。内側は白く、外縁がうっすらと赤紫色を帯びていますね。
小さな十字。
密集して開花しています。
うん?
下方の赤いのは蕾でしょうか。
かなり小さな花ですので、匂いを楽しむには自分の鼻を近くまで持っていきます。
古代の人が結び付けた花と鼻の出会いです。
花の命は短いが故に、そこに願いが生じたのでしょう。
いつまでも咲き続けて私たちを楽しませてほしい。
幸せの語源にもなった「幸はひ(さきわい)」は、華やかな花が咲き続けることを意味しています。今年も沈丁花の香りを楽しむのは期間限定です。花が散る時期はいつなのか、一度確かめてみようと思います。