長尾神社から磐城小学校の前を通って孝女伊麻旧跡に向かう途中、鍵状の曲がり角の手前に大磯虎女旧跡地がひっそりと佇んでいます。
虎女（とらじょ）は「大磯の虎」の愛称で知られる鎌倉時代初期の遊女です。全国各地に大磯の虎の伝承地は存在していますが、ここ奈良県葛城市南今市にもその旧跡地が残されています。
大磯虎女旧跡地。
右側は民家で、左側の建物は工事中のようでした。
「曽我物語」の仇討ち
曽我十郎祐也（すけなり）と弟の五郎時致（ときむね）の兄弟が、苦節十八年の末、父の敵討ちを果たします。しかしながら、兄の曽我十郎祐也はその場で斬り殺されます。十郎の妾であった大磯の虎女は、夫の霊をなぐさめるために、この地蔵堂にわび住まいをしていたと伝えられます。
虎御前とも呼ばれ、和歌の道にも通じていた容姿端麗な大磯の虎。
仇討ちを早くから考えていた曽我十郎祐也は、自ら死んだ後のことを考慮して、妻帯しないことを決めていました。遊女であった大磯の虎は、そんな十郎の心の支えになっていたのかもしれません。
布施今市地蔵のお堂。
この格子戸の中にお地蔵様が祀られているのでしょうか。
「大磯虎女旧跡地」の石標の横に、南今市青年団の文字が刻まれています。
虎女の別名に「三寅御前」という呼び名がありますが、これは寅年の寅の日の寅の刻に生まれたことに由来すると「曽我物語」に記されています。しかしながら、実際には虎女は未（ひつじ）年生まれであるとされます。
寅の年、寅の日、寅の刻に毘沙門天を感得し、信貴山朝護孫子寺を開いた聖徳太子のことを思い出しますね。
大磯虎女旧跡地の案内板。
下から三行目に、虎女が架けた「虎がはし」という橋が残されていると説明されています。磐城小学校前にあるらしいのですが、残念ながら見過ごしてしまいました。また、地蔵院には虎女の墓印と伝えられる虎石がお堂前にあります。
お堂の左手前にお地蔵さんが祀られていました。
大磯虎女旧跡地は葛城市観光マップにも掲載されていませんので、見過ごさないようにしたいですね。最寄り駅は近鉄南大阪線の磐城駅です。駅から徒歩１０分余りでしょうか、左手に磐城小学校を見ながらしばらく進むと、右手に小さなお堂が見えて参ります。
葛城市観光の穴場とも言える大磯虎女旧跡地をご案内致しました。
