春季特別展開催中の橿原考古学研究所附属博物館。
倭屯倉(やまとのみやけ)が置かれた奈良盆地中央最大の前方後円墳・島の山古墳の発掘20年を記念するイベントが開かれています。川西町唐院にある島の山古墳ですが、私はまだ一度も訪れたことがありません。この企画展を機に、実際に島の山古墳にも足を運んでみようと思いました。
古墳時代の女性司祭者をイメージするパネルが掲示されています。
特別展の写真撮影は禁止ですので、残念ながらご紹介するお写真はほとんどありません。島の山古墳には女性が埋葬されていたと考えられ、前方部の埋葬施設からは碧玉製の腕輪形石製品をはじめとした数多くの遺物が出土しています。
神代の奇石と呼ばれる鍬形石
島の山古墳の発掘調査は1996年に行われているそうです。
発掘20年と言いますから、注目を集めるようになってまだ日の浅い古墳と言えそうです。
重要文化財に指定される出土遺物も数多く、その質と量には驚かされます。特に印象的だったのは車輪石と鍬形石でしょうか。よく似たものを東大寺山古墳の出土遺物の中にも見た覚えがありますが、その特異な形状には目を奪われます。
鍬形石。
写真の鍬形石はイベントのチラシから拝借致しました。この鍬形石は北谷11号墳(滋賀県立安土城考古博物館所蔵)のもののようです。
それにしても変なカタチ(笑)
鍬形石の名前は、鍬の刃の形に似ていることから江戸時代にネーミングされています。その起源や用途に関しては謎に包まれており、神代の奇石と扱われたそうです。
鍬形石の起源は?
その謎が解明されたのは、1947年に実施された大阪府茨木市の紫金山(しきんざん)古墳の発掘調査でした。竪穴式石室から南海地方で採取されるゴホウラの貝輪と、その形をそのままうつしとったような鍬形石が出土したそうです。どうやら、貝のブレスレットを鍬形石に置き換えていたものと思われます。
2016年度春季特別展「やまとのみやけと女性司祭者」~史跡 島の山古墳発掘20年~。
先日訪れた奈良県立美術館の休憩所にも、橿考研博物館の宣伝チラシが置かれていました。
女性司祭者が神との交信を試みているようですね。
今回のイベントでは、入館受付の近くにビデオ閲覧コーナーも設けられていました。
島の山古墳発掘調査の時の模様が映し出され、慎重に作業を進める人たちの様子が手に取るように分かります。作業員の方々の緊張感も伝わってくる貴重なビデオです。入館の際は、是非視聴されることをおすすめ致します。
ミュージアム前庭に展示される深谷1号墳の組合式石棺
橿考研博物館に来ると、いつも気になるのが玄関右横の屋外展示スペースです。
束明神古墳の復元石室や珠城山古墳の石棺が展示されている場所ですが、桜井市忍阪にあるという深谷1号墳の組合式石棺もありました。
深谷1号墳の組合式石棺。
時代は7世紀中頃にまでさかのぼるようです。
榛原石の板石を精巧に組み合わせた石棺で、小型の円墳内の横穴式石室に納められていた。棺内から多数の人骨が出土した。
今となってはもう、その墳丘は原形をとどめていないようです。
桜井市の古墳ということですが、桜井市民の私でさえその名前を知りませんでした。おそらく現地へ行ってみても、古墳であることを確認することすら難しいのかもしれません。
うん?これは盗掘孔でしょうか。
それとも自然と空いた孔?傷みが進んでいるためか、針金で固定されています。
今まで知らなかったことに出会える博物館です。
今回の春季特別展に並行して、研究講座、シンポジウム、列品解説、遺跡見学会なども行われています。
GW期間中の5月1日には、「島の山古墳と三宅・川西町の遺跡を歩く」と題して遺跡見学会も行われたようです。毎度のことながら、こういう仕事をしているとなかなかイベントに参加することが叶いません。その道に詳しい先生の解説付きで、実際に遺跡を歩いてみたいものです(笑)
入館の最後に、重要文化財に指定される首飾りを目に焼き付けながらミュージアムを後にしました。