近鉄奈良線額田駅が最寄りの重願寺(じゅうがんじ)。
枚岡神社参拝の後に訪れました。
暗峠へ続く道を横切り、枚岡公園に入ります。公園内の大型遊具を横目に、その先の重願寺へと迷い込みました。ひょんなことから見つけたお寺ですが、高台に建つ立派な建物が目を引きます。豊臣秀吉の本願により建立されたお寺のようです。
浄土宗本誓山重願寺。
山号は「本誓山(ほんせいざん)」のようです。
大阪市街地を見下ろす絶景ポイントに山門が建ちます。山中にひっそり佇む寺院が多い中、こんなに景色の開けたお寺も珍しいのではないでしょうか。
近松門左衛門の作品にも登場!多宝塔の聖観音立像
まずは境内の多宝塔に導かれます。
こんな場所に、随分立派な多宝塔が建っているなぁ・・・と口をあんぐり開けながら境内へ入りました。
多宝塔には聖観音立像が祀られているようです。
近松門左衛門の作品にも見え、江戸時代以来信仰される観音様です。大坂三十三所観音廻りの第十七番に当たります。山門を入ると、右手前の一角は墓地でした。
山門前に開ける眺望。
すぐ下が駐車場で、その先に見事な風景が広がっていました!
枚岡神社の神津嶽へ向かう途中、枚岡山展望台にも立ち寄りました。ここより標高の高い展望台からの景色は見事の一語に尽きますが、重願寺も負けてはいませんね。
重願寺の阿弥陀如来坐像と聖観音立像。
寺は本誓山(ほんせいざん)と号し、もと大阪の谷町にあり昭和37年に墓地と共に現在地へ移されてきた浄土宗の寺院です。寺は、豊臣秀吉の本願で、文禄年間(1592~1595)に岸誉雲海上人(がんにょうんかいしょうにん)の開基と伝えられています。
本尊の木造阿弥陀如来坐像は、像高140cm、頭高46cm、膝張108cmで、木彫全金色で定印を結び、舟形光背を負い重弁蓮台(じゅうべんれんだい)に座しておられます。台座、光背は江戸時代の後補(こうほ)ですが、そのお顔や衣は、藤原時代の特徴を残しています。
多宝塔におまつりされています聖観音立像は、高さ105cm、お顔は温和で、前面下半身は衣文の彫りも浅く扁平です。両手、天衣(てんね)、金具、台座を後補していますが、藤原様式の優美な観音像です。
この観音像は、大坂三十三所観音廻りの第十七番として、江戸時代以来信仰され、近松門左衛門作「曾根崎心中、附り観音廻り」の中にも「十七番に重願寺、ここからいくつ生玉の、本誓寺ぞと伏拝む」と見えており、昔から有名な観音であったことがわかります。昭和49年3月に市の有形文化財に指定されています。
重願寺のある所は、もと真言宗不動寺(ふどうじ)の跡で、額田の高内皆人(たかうちみなんど)の草創した寺と伝えています。別名長尾寺といい、慈雲尊者(じうんそんじゃ)ゆかりの寺でしたが明治6年に廃寺となりました。
境内には、慈雲尊者の歌碑も保存されています。
平成9年3月 東大阪市
絶景を背にする多宝塔。
特別開帳の時期などは設けられているのでしょうか。
裏手からも境内に入ることが出来ます。
私は当初、こちらから迷い込みました。
多宝塔と言えば、真言宗を思い浮かべます。この場所にはかつて、真言宗不動寺が建っていたと言います。重願寺は大阪の谷町から移ってきたようですが、この多宝塔は元来どちらのものだったのでしょうか。なんだか気になりますね。
十三重石塔も建っています。
その脇にはペット供養墓がありました。
大阪市街地を見下ろす多宝塔。
久宝寺メガシティタワーズやあべのハルカス、梅田の高層ビル群など広い範囲にわたって大阪を一望することができます。聖観音様も、さぞ気持ち良いことでしょう。
重願寺のペット供養墓。
墓石に「ともいき」と刻みます。
いい言葉ですね、“ともいき”。
音読みにすれば「共生(きょうせい)」と途端に味気なくなります。
やはり訓読みならではの深みがありますね。ペットと共にから“人”と共に、広がりを持たせて考えてみるのもいいでしょう。お互いの価値観を認め合い、共に生きる「ともいき」・・・ウクライナ問題に端を発し、混迷を極める世界情勢にも思いを馳せる瞬間です。
純粋なペットは教えてくれます。
私たち人間に足りないものを、気付いてほしいことを。
ペットの納骨にも応じて下さるようです。
人も動物も皆、想いは一つです。
願いを重ねる重願寺。
石燈籠の竿に刻む「六波羅講中」。
京都東山の六波羅エリアとも何か関係があるのでしょうか。
額田聖観音と書かれていますね。
この後、近鉄額田駅にも立ち寄りました。重願寺から坂道を下り、駅へと到着します。東西に線路が敷かれ、やや傾斜が付いていました。アップダウンの激しい場所であることが分かります。
先ほどの山門を見下ろします。
重願寺の所在地は東大阪市山手町です。
電柱の住所表示は、東豊浦町になっていますね。道を挟んで隣町ということなのでしょう。
「浄土宗本誓山」の重願寺。
浄土宗のお寺ですから、総元締めは法然上人ですね。
井上真改(いのうえしんかい)の墓もあるようです。
江戸時代前期に摂津国で活躍した刀工で、重要文化財にも指定される太刀があります。
山門越しに見る大阪市街地。
額縁に切り取られた風景に身を寄せながら、何気ない日常の有難さを想います。