アカエ絵馬!大阪市の廣田神社

今宮戎神社から北へ徒歩2,3分の場所に廣田神社というお社があります。

かつては鬱蒼とした広い杜の中に鎮座していたようですが、今はタワーマンションを背にする小ぢんまりとした境内です。西には木津市場があり、今もナニワの空気が漂います。

廣田神社アカエ絵馬

廣田神社のアカエ絵馬。

尾に鋭い棘を持つ ”赤エイ” がモチーフになっています。

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痔疾はじめ、難病治癒の廣田神社

廣田神社には痔疾の平癒を祈り、全快の報賽にアカエの絵馬を捧げる習わしがあります。

神社の近くには木津魚市場があります。そこで働く漁師たちは船底の冷えで痔疾に悩まされていたことでしょう。アカエイは尾の棘に毒があることから、漁獲後すぐに尾の付け根から切り落とされます。そのことが自然とアカエイの信奉にも結び付いていったものと思われます。

廣田神社社号標

廣田神社社号標。

明神鳥居に注連縄が張られます。縄の上には真一文字に竹が渡されています。

廣田神社拝殿

廣田神社拝殿。

木扉が付いていますね。

拝殿内にはアカエの奉納額(板絵)が掲げられています。

廣田神社の御祭神は天照大神の荒魂です。廣田神社から1㎞ほど東方には四天王寺があり、四天王寺の鎮守神とも言われます。今宮村の産土神であり、かつてはその参道は今宮戎まで延びていたそうです。

アカエ由来

エッセイストの額田武さんによるアカエの話が掲示されていました。

古くから、廣田神社の神使とされてきたアカエ。赤鱏あるいは赤鱝と書くアカエイの関西での呼び名ですが、絵馬として神前に奉納されていますから、ごらんになっていることでしょう。

このアカエ、痔疾をはじめ難病悪疫の守り神として広く信仰されており、アカエを断って、つまり断食して祈願すれば、霊験あらたか難病も治癒するといわれます。

特に痔疾にあらたかだとされるのは、アカエの尾には鋭いトゲが飛び出していて、トゲには鋸状(ノコギリ)の歯が逆向きに並び、これに刺されると傷口が荒れ、その毒によって物凄い痛みを覚えるからで、漁師はアカエを捕らえると同時に尾の付け根からぶっつりと切り落してしまうそうで、この尾を断ち切ることをアカエを断つにかけて、トゲに刺された痛みにも似た疾患を無くすといった信心が生まれたのかと思われます。

廣田神社のあるあたり、いまも木津の漁市場があるように、昔は漁師町だったからでしょう。舟底の冷えなどで漁師に多かったといわれる痔疾がアカエ信仰と結びついたのかもしれません。

廣田神社の赤土稲荷社

境内社として、赤土稲荷神社が鎮座しています。

御祭神は米倉稲荷大神・楠稲荷大神・赤土稲荷大神とされます。

アカエ由緒

もっとも、アカエが美味だったこと、さらに漢方薬として珍重されていたことも、これを断たせることで献上につながったのではないか、かつて廣田神社の宝物に禁裏御所御厨子所御肴物御用の魚箱があったことと重ね合わせて、ちょっと意味深く思った次第です。

アカエイは漢方薬の材料にもなるんですね。

なかなか市場に出回らないアカエイですが、冬場のアカエイの煮凝りは最高に美味しいです。捌くのに少々手間取りましたが、もっと流通してもいい魚だなと思います。

アカエイの煮凝り!冬場の御馳走
ご宴会のお客様に赤エイの煮付けをお出ししました。 冬場の煮こごりが美味しい赤エイ。尾っぽに毒を持つ棘があることで知られる赤エイ。アレルギー体質の人などは、刺されるとアナフィラキシーショック症状を引き起こすこともありますので注意が必要です。 ...

廣田神社

廣田神社の社頭。

アカエイをデザインした幟旗がはためきます。都会の中の神社ですね。

廣田神社狛犬

狛犬の首にも注連縄が掛かります。

拝殿前には二本の石柱・注連石(しめいし)が建ちます。

廣田神社注連石

注連石の間にも、横一直線に竹が渡されます。

四つの紙垂がひらひらと風に揺れていました。

廣田神社の創建は不明ですが、その由緒に関しては神功皇后の三韓征伐の話が伝わります。

神功皇后は三韓征伐の帰りに難波に海路をとりました。

ところが、船は海中をぐるぐる回るばかりで前に進まなかったそうです。そこで、占いをたてたところ、天照大神から摂津国の広田の杜に祀れという神託が下ります。アマテラスの神託により、天照大神の荒魂・撞賢木厳之御魂天疎向津媛命(つきさかきいつのみたま あまさかるむかひつひめ)をこの地に祀ったことが始まりとされます。

兵庫県西宮市の廣田神社にも似たような言い伝えがあり混同しますが、おそらく西宮の廣田神社が勧請されているのでしょう。

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灯籠奉納を募る赤土稲荷社

境内の北側へ回り込むと、境内社の赤土稲荷社が祀られていました。

複数の鳥居が建ち、お稲荷さんの風情を醸します。

赤土稲荷社の鳥居

拝殿の左脇から奥へと鳥居が続いています。

鳥居の両脇には、一本足で立つ奉納燈籠が並びます。どうやら参道整備事業が進められているようで、奉納燈籠の寄進案内がありました。赤土稲荷社の社殿は、この先を右へ曲った所にあります。

廣田神社の赤土稲荷社

右へ曲ります。

その先に参詣所がありました。

こちらにはまだ、稲荷灯籠が見当たりませんね。おそらく今後、徐々に奉納されていくのでしょう。

赤土稲荷社の狛狐

巻物を咥える狛狐。

尾っぽをピンと立て、祠を守っています。軒下に掛かる赤い幕には、稲穂と鎌の紋が見られます。ここは五穀豊穣を願う場所です。

赤土稲荷社の狛狐

向かって右の狛狐は宝珠を咥えます。

キツネの後方、廣田神社の瑞垣には数多くの奉納者の名が刻まれています。

稲荷灯籠寄進

只今、稲荷灯籠の設置が進められているようです。

スマートな灯籠で、場所を取らなくてよさそうです。

廣田神社祖霊社

ひっそりと祀られる祖霊社。

拝殿向かって右手前に位置しています。その右側には、多くの奉納絵馬が掛かっていました。

廣田神社アカエ絵馬

社紋は五七桐でしょうか。

尾の付け根近くの棘を強調し、躍動的に描かれています。長田神社にもアカエイの絵馬がありますが、廣田神社の方が写実的です。

アカエの話

アカエイの「エイ」は漢字で魚編に「章」と書くこともあるんですね。

本当に魚編の漢字は多くてややこしくなります(^-^;

アカエの話

「都市の中のまつりの発見」。

長い歴史の中で様々に言い伝えられながら、その姿を変えてきたであろう神社。

市場を近くに抱える土地柄も、大いに廣田神社に影響を及ぼしていることでしょう。今宮戎神社とも深く関わってきたものと思われます。

大阪市浪速区の廣田神社へのアクセスは、南海高野線今宮戎駅から徒歩4分となっています。駐車場は完備されておらず、公共交通機関の利用をおすすめします。

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