大神神社の三ツ鳥居はつとに有名ですが、その他の鳥居にも注目してみました。
鳥居は神明系と明神系の2種類に大別されますが、大神神社の各鳥居は明神系に属します。質素で直線的な神明系に対し、装飾性に富んだ鳥居です。
夫婦岩の鳥居。
二本の立柱の上に、横に渡される木を笠木(かさぎ)と言います。一番上部の笠木の下に、さらにもう一つの横木が見えますが、それを島木(しまぎ)と言います。反りを持つ笠木と島木が重なるのは明神鳥居の特徴の一つです。
注目して頂きたいのは笠木の断面。
島木やその下の「貫」が四角形なのに対し、笠木の断面だけは五角形ですね。
亀腹を土台に建つ大神神社の鳥居
笠木の断面は五角形なんだ・・・今更ながらに再確認します。
まるで絵馬のような形をした笠木に感動しながら、他の鳥居も調査してみたくなりました。
笠木とは鳥居のみに限った用語ではなく、階段の手すり上部に被せる仕上げ材のことも指します。あるいは、ベランダ壁の最上部に被せるものも笠木と言います。建築の世界においては、総じて最上部に横に渡すものを意味しているようです。
こちらも笠木と島木が重なる明神鳥居ですね。
やや柱が内側に傾く転びも見られるでしょうか。
笠木の反り増しははっきりと確認できます。両側に弓のように反り上がり、神明鳥居にはない曲線美が感じられます。
一の鳥居の笠木断面。
やはり五角形です。
島木と、その下の貫の断面は四角形ですよね。一際大きい笠木が鳥居の最上部に乗っかります。
一之鳥居の亀腹(かめばら)。
鳥居の柱脚部を饅頭型に固めていますね。
寺社建築の多宝塔などにも「亀腹」と呼ばれる部分があります。多宝塔の上層と下層の間に、白漆喰で塗り固められた部分を言うのですが、みな基礎を保護するためのものと思われます。
大神神社二之鳥居。
同じく明神鳥居ですね。
柱と貫の交差部には「楔(くさび)」の意匠が見られます。
”くさび” で思い出すのが、「炎のストレート」と称された阪神タイガースの藤川球児投手です。阪神タイガースを優勝に導いた快投は記憶に新しいところです。チームのストッパーとして大車輪の活躍をした藤川投手の役割は、まさしく「くさび」でした。
なぜ鳥居にくさびが付いているのか?おそらくそれは貫を補強するためだと思われます。
そう言えば、ドアを開けた後、勝手に締まることのないように下部にかませるものも「くさび」ですよね。
二之鳥居の亀腹。
亀腹を土台にするのも明神鳥居の特徴です。
大神神社大鳥居の亀腹。
その高さは32mを超え、日本で二番目の高さを誇ります。巨大な大鳥居を支える亀腹のスケールも相当なものです。神奈備・三輪山が小さく見えますね。
大鳥居の笠木もチェック。
やはり五角形でした。
こちらは綱越神社の鳥居。
綱越神社のスタイルも、反り増しが顕著な明神系です。小振りではありますが、ちゃんと亀腹に支えられていました。
綱越神社の笠木。
想像に違わず五角形です。
神社の入口である鳥居は、誰でも自由に出入りが出来ます。時に閉ざされるお寺の門とは違いますよね。
その気にさえなれば、24時間いつでも参拝可能な大神神社。
鳥居の由来の一つに「通り入る(とおりいる)」説があります。いつでも誰でも自由に通って入れるところから、「通り入る→鳥居」となったようです。鳥居の起源に関しては、諸説紛々、様々な説が唱えられていますので一概には言えませんが、一説としては面白いですよね。
今回の鳥居巡りは新たな発見でした。
たまには鳥居を横から見上げてみるのもいいものですね。