葛城市疋田に鎮座する調田坐一言尼古(つくだにます ひとことねこ)神社。
読み方が難しい式内大社です。
周辺道路が狭く入り組んでおり、初めて行く際は迷うかもしれません。私は今回、国道24号沿いに駐車してそのまま徒歩で向かいました。二上山を望む西を目指して進み、近鉄御所線の踏切を超えます。住宅街を抜けた右手に一言尼古神社がありました。
調田坐一言尼古神社一の鳥居。
社号標に「式内大社」と刻みます。反りの入った明神鳥居が出迎えてくれました。
拝殿の奉納絵馬を見学!カルガモ親子の引っ越し
一願成就の神様です。
御所市森脇に葛城一言主神社がありますが、同じ一言主大神が祀られています。調田坐一言尼古神社のパンフレットには、御祭神として一言尼古大神(ひとことねこおおかみ)と事代主大神(ことしろぬしおおかみ)の二柱が案内されています。
二の鳥居と拝殿。
拝殿には古色蒼然とした絵馬が多数奉納されていました。
向かって右側に掲げられる奉納絵馬「一ノ谷」。
白馬に騎乗するのは平家の公家・平敦盛(当時17歳)。
それを追う黒馬騎乗の熊谷直実。平家の船に逃げ込もうとする敦盛を呼び止め、首を取ろうとする迫力のシーン。鬼気迫る瞬間ですが、自分の息子と重なり躊躇する直実の表情が胸を打ちます。
向かって左側の奉納絵馬「川中島」。
軍配団扇の武田信玄と、白頭巾姿の上杉謙信が描かれています。
調田坐一言尼古神社の左隣りの疋田公民館。
公民館前に小さな公園と駐車場がありましたが、おそらく神社のものではないでしょう。
調田坐一言尼古神社の場所ですが、大和高田バイパスよりも北側です。近鉄尺土駅の南方で、新庄北小学校よりは北側に位置しています。
国道側から西へ歩いて来ました。
近鉄御所線の向こうに二上山を望みます。近鉄線より手前の東側には、奈良文化高等学校や奈良文化幼稚園がありました。
踏切道尺土第七号。
この踏切を渡り、さらに西へ向かいます。
カーブミラーに住所が表示されていました。
葛城市の公式マスコットキャラクター・蓮花(れんか)ちゃんが、ここが葛城市疋田であることを教えてくれます。誕生当時は“せんとくんの恋人候補”でしたね。
民家を抜けた先にありました!
線路沿いからも社叢が見えており、大体の見当はつきます。
石燈籠の竿には「春日社」と刻まれています。
調田坐一言尼古神社の歴史を紐解くと、江戸時代には春日神社と呼ばれていたようです。
調田坐一言尼古神社の二の鳥居。
緩やかな太鼓橋が架かっていますが、どうやらここがカルガモスポットのようですね。
調田坐一言尼古神社の池。
カルガモ親子の子育て風景が楽しめる場所です。私が訪れた時は、残念ながら既に引っ越しをした後でした。タイミングが難しいですね。
2023年5月9日付けの毎日新聞紙面。
葛城市疋田の調田坐一言尼古神社でカモのひな11羽がかえり、親ガモと一緒に池を泳ぐ愛らしい姿が訪れる人の目をひきつけている。高津和司宮司(63)によると、神社には2005年からカモが集まりだし、ここ6年間は親子の姿が見られる。今年のひなは5日に孵化。例年は池のカエルなどに襲われることもあるが、今年は1羽も欠けること無く、順調に育っている。カモの親子は数日以内に近くの川や田んぼへ引っ越すという。神社ではカモのイラストが入った御朱印を11日まで用意。高津宮司は「カモの親子の姿を見たら自然に笑顔になる。これも神様のご神徳。穏やかな気持ちで参詣してほしい」と話している。
記事を読んで少し驚きましたが、蛙に襲われることもあるんですね。何とも健気(けなげ)です。
複数の石燈籠が整然と並びます。
奥行きのある境内ですね。
右手前に手水舎がありました。
休憩用ベンチも奉納されているようです。
遥拝所の石柱。
方角的には東を向いています。
調田坐一言尼古神社の北緯を調べてみると、北緯34度30分と出ていました。ほぼレイライン(太陽の道)上ということになりますね。伊勢神宮を遥拝するのかもしれません。
式内大社の調田坐一言尼古神社。
御祭神は一言尼古大神(ひとことねこおおかみ)と事代主大神(ことしろぬしおおかみ)です。
天平勝宝4年(752)から続く東大寺の修二会(お水取り)・・・
修二会の行の無事を祈るため、全国の522柱の神々を勧請して祈願する慣わしがあります。その中で、調田坐一言尼古神社の神様は56番目に勧請されているそうです。奈良朝以前からの、歴史ある神様を祀ります。
カルガモ引っ越しの案内。
どうぞ無事にすくすくと育っていって下さい。
池から出たり入ったりと、色んな動きが楽しめたのでしょう。
池を取り囲むギャラリーの笑顔も想像できます。
こうして見ると、調田坐一言尼古神社の拝殿は左右対称ではありませんね。
中央やや右寄りの引き戸を開け、中に入ることができます。
文久元年(1861)の古い絵馬から現代のものまで、氏子の一言の願いが多くの絵馬に託されていました。
境内東側にも鳥居が建っています。
横から入ることも出来るようです。
毬を踏む阿形の狛犬。
毬は玉(ぎょく)ですから、やはり富や財宝を表すのでしょうか。
拝殿正面の奉納絵馬。
実に多種多様な絵馬を見学することができます。
こちらは一願成就の開運絵馬。
今年は卯年ですから、おそらくこれは干支絵馬ではないでしょう。元来、神社には生きた馬である神馬(しんめ)を奉納していました。時代を経て、今の小さい五角形の絵馬に収束していきます。
神輿の収蔵庫でしょう。
池の脇に建っていました。毎年10月第2日曜日の秋祭りに、御神輿(おみこし)が郷内を巡るようです。いわゆる神幸祭ですが、御旅所で氏子の安全と産業の発展を祈ります。
歴史ある式内大社の調田坐一言尼古神社。
カルガモの季節は概ね5月中旬ですが、それ以外でも是非訪れて欲しい神社です。