桃の神様として知られる意富加牟豆美命(おほかむづみのみこと)。
等彌神社の「逆さ紅葉」で有名な桃神池に、意富加牟豆美命が祀られていました。
桃には厄除けのパワーが備わっていると言われます。
桃の形は見れば見るほど、お寺や神社の如意宝珠や擬宝珠を連想します。
逆さ紅葉に想う二相世界
桃の持つ霊力にあやかりたい。
神話の世界からつながる系譜には、桃に対する畏怖が感じられます。
紅葉ライトアップのための照明器具がスタンバイしています。
神武天皇ゆかりの地として観光スポットにもなっている等彌神社ですが、桃で思い出すのが卑弥呼で話題の纒向遺跡です。祭祀に使われたのではないかとされる木製仮面や大量の桃の種が、纒向遺跡から出土しています。
呪術に桃は必須アイテムだったのでしょうか。
奈良や京都の寺社では、鬼瓦の代わりに桃をデザインした瓦もよく見かけます。
桃神池に映り込む逆さ紅葉。
水面に映し出される紅葉は、殊の他美しさが感じられます。新婚旅行でスイスへ行った時、水面に映し出される逆さマッターホルンを堪能しましたが、ふとそのことを思い出しました。
意富加牟豆美命を祀る祠の前に、黄色い綺麗なつわぶきの花が咲いていました。
日本の国土と、神話に登場する数多くの神々を生んだ夫婦神といえば、伊邪那伎命(イザナギノミコト)と伊邪那美命(イザナミノミコト)です。そして、桃の実に「意富加牟豆美命」という名前を授けたのは伊邪那伎命(イザナギノミコト)だと言われます。
黄泉の国へ妻に会いに行った伊邪那伎命(イザナギノミコト)ですが、夫婦喧嘩の末に逃げ帰る羽目に陥ります。やっとのことで、この世とあの世の境にある黄泉比良坂(よもつひらさか)まで辿りつくことが出来ました。
なぜ夫婦喧嘩になったのか?
妻の伊邪那美命(イザナミノミコト)が、これから寝るので姿を見ないでほしいとお願いしたにも関わらず、誘惑に負けて見てしまった夫の伊邪那伎命(イザナギノミコト)。妻の体には、膿が出て蛆(うじ)がたかっていたと言われます。
見ないでほしいと言ったのに、つい見てしまった・・・。どこか三輪山神話とも重なるところがありますね。
等彌神社の駐車場へ続く道。
右側に見えるのが逆さ紅葉ですね。その下に桃神池がひっそりと鎮まります。
黄泉比良坂(よもつひらさか)まで逃げ帰った伊邪那伎命(イザナギノミコト)は、そこに成っていた桃の実を三つ追っ手に打ち付けます。すると、追っ手は黄泉の国へと逃げ帰ったと伝えられます。
桃の実に宿る霊力は、イザナギとイザナミの夫婦喧嘩のお話に由来していたのです。
どこか「鏡」を思わせる桃神池の水面。
古今東西の昔話からも、鏡の中に秘められたスピリチュアルなメッセージが感じられます。
池の中があの世で、水面から上がこの世を表しているのでしょうか。どこかでつながっている二相の世界。陰と陽があって初めて実現する逆さ紅葉の光景は、意富加牟豆美命が鎮まる場所としてふさわしいような気がします。