法隆寺境内に鳴り響く時を告げる鐘。
奉納鏡で知られる国宝・西円堂の東側に、ひっそりとその鐘楼は佇みます。
時を知らせる法隆寺の鐘楼。
鎖で囲われており、一般参拝客の出入りが禁じられているようです。
鐘の音と言えば、誰しも学校のチャイムを思い出すのではないでしょうか。チャイムの音で授業の開始を知り、授業の終わりを知らされます。退屈な授業では、チャイムの音が待ち遠しく感じられます。休み時間になれば、校庭で野球をして楽しんだものですが、楽しい時間はあっという間に過ぎ去るもので、チャイムの音が恨めしく思えたことを思い出します。
時を告げる鐘である西円堂横の鐘楼は、2時間おきに時間の経過を知らせてくれます。その合図を元に何かが始まったり終わったりするのではないものと思われますが、参拝客にとっては有難い鐘の音です。
撞いてはいけない時の鐘
全国各地のお寺の中には、自由に撞ける鐘が少なからずあるものですが、ここ法隆寺の鐘は自由に撞くことができません。参拝の際には注意が必要ですね。
「時の鐘ですから つかないで下さい」
と案内されています。くれぐれも勝手に撞いてはいけません(笑) 法隆寺の鐘は、毎日8時、10時、12時、14時、16時の2時間おきにその数だけ撞かれています。
鐘の音は単なる合図にとどまりません。人は鐘の音の余韻に様々な思いを寄せます。日本人は「名残(なごり)」を感じさせるものに一方ならぬ愛着を感じる傾向があります。海に囲まれた日本人は、寄せては返す波を見てその「波残り」に各々の情景を見たのではないでしょうか。波残りが名残りという言葉の由来になっていることを思えば、その風景が重なります。
鐘の音の余韻はそれぞれの心象風景を生み出します。
国宝の法隆寺西円堂。
西円堂は屋根に宝珠の飾られた建物で、薬師如来坐像が安置されています。節分の日には追儺の祭りが執り行われ、毘沙門天が鬼を追い払います。ここ数年来、節分の日には大神神社の豆撒き行事に参加させてもらっているのですが、是非一度法隆寺にも足を運んでみたいなと思います。
法隆寺西室方面から東の方向を望みます。
五重塔の水煙がわずかに見えていますね。
三経院の角を曲がって西円堂へ向かう途中、聖徳太子像と思しき石像が立っていました。
向かって右手におられるのはお地蔵様でしょうか。
西円堂の下の円明院(えんみょういん)は、親鸞聖人が学んだ場所と伝えられます。聖徳太子を慕ったとされる親鸞聖人は、円明院に於いて因明学(いんみょうがく)を学んだというお話が伝わっています。後世の人々に多大な影響を与えた聖徳太子ですが、おそらくこの石像も聖徳太子その人ではないでしょうか。
鐘の横に目をやると、KEEP OUT の看板がありました。
下手には何やら建物が見えましたが、何の建物かは定かではありませんでした。家に帰ってから法隆寺の境内図を確認してみたところ、どうやら地蔵堂ではなかったかと推測されます。
大型観光バスのツアーで法隆寺を巡る御一行様は、法隆寺観光の中心である西院伽藍と東院伽藍を見学して次の目的地へ向かわれます。西円堂や時の鐘のある小高い丘まで登って来る人は稀です。法隆寺の鐘の音は、おそらくそんな弾丸ツアーの参拝客の耳にも届いているものと思われます。