法隆寺の七不思議として知られる伏蔵(ふくぞう)。
今回の法隆寺参拝で、改めて世界遺産法隆寺の奥深さに気付かされました。
大湯屋表門前に佇む伏蔵。
数年ぶりに訪れた法隆寺境内。南大門前の駐車場に車を停めて、鯛石を見ながら南大門をくぐります。真正面に中門と五重塔が見え、その手前には参拝客が行き交います。中門手前の石段下に手水舎が用意されています。そこで禊をした後、ふと西大門方向に目をやると注連縄の張られた空間がありました。
伏蔵は開かずのタイムカプセル
法隆寺の伏蔵は、開けてはならないタイムカプセルとして守られてきました。
通りすがりのお寺関係者の方にお伺いしたのですが、あの伏蔵には聖徳太子の願いが込められているとのことでした。法隆寺には長年言い伝えられていることがあります。法隆寺に重大な危機が訪れたなら、伝説の伏蔵を開いてその危機を切り抜けよ、とのお達しです。
金銀財宝が埋まっているのか定かではありませんが、その神秘的な空間に興味を覚えます。
西大門を背に、伏蔵を撮影。遥か彼方に、東院伽藍へと続く法隆寺の東大門が見えています。
容易に開けてはならないというその言い伝えに、どこか鶴の恩返しや浦島太郎のお話に通じるものを感じます。二つの昔話に共通することは、見ないで下さいね、開けてはなりませんよという通達に背いてしまったことです。その意味するところは何なのでしょうか。
法隆寺の伏蔵は、未だにその言い伝えが守られています。
一参拝客としての立場からも、どうかそうあり続けて欲しいと願います。伏蔵を開けるときはのっぴきならない時であり、法隆寺としては望ましくない瞬間なのです。そういう事態に陥らないためにも、普段から慎んで生活を送ってほしいという聖徳太子の御意向が感じられます。
校舎の片隅に卒業生が集まって、地中のタイムカプセルを開ける光景がよくニュースで流れます。一つの区切りを確認し合う喜びの場でもあります。そこには担任の先生の姿も見られます。
開けることを前提としたタイムカプセルとも言えますね。
しかしながら、法隆寺の伏蔵は開けることを前提としているでしょうか?この辺りに人々を惹き付けて止まない、何か偉大なサムシング(SOMETHING)を感じるのです。
斑鳩町のマスコットキャラクター・パゴちゃん。
法隆寺から斑鳩神社、法輪寺方面へ歩いて行く途中で見つけました。
「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」の歌はあまりにも有名ですが、斑鳩町のシンボルはどうやら、柿と法隆寺五重塔で構成されているようです。名前の由来ですが、東洋の仏塔のことをPAGODA(パゴダ)と言います。そのパゴダからパゴちゃんという命名に至ったようです。
法隆寺中門と五重塔。
国宝ひしめく法隆寺ですが、目の前の中門も飛鳥時代の国宝として知られます。エンタシスの柱が印象的で、両側に陣取る奈良時代の金剛力士像も迫力があります。
法隆寺の伏蔵は合計三箇所にあります。
写真の伏蔵は大湯屋前の伏蔵ですが、他にも金堂の東北角と、経蔵内にそれぞれ存在しています。金堂と経蔵の二つの伏蔵は昔からその位置が確認されていました。しかしながら、この大湯屋前の伏蔵は伝承のみで、長い間はっきりとした場所が不明のままでした。
昭和58年7月21日に至り、この場所の地表面約10cmの土の中から楕円形の大石が発見されました。金堂と経蔵の伏蔵も大石で蓋がされていたことから、第三の伏蔵として注目を集めました。
法隆寺の築地塀。
数年前に心無い落書きで問題になりましたね。
「貴重な文化財を守る心」を大切にしたいと思います。この位置からも、左手奥に伏蔵が確認できます。
「腹蔵(ふくぞう)無くおっしゃって下さい」。
という日本語の表現があります。心中に隠し立てをすることなく、包み隠さずおっしゃって下さい。といった意味になりますが、法隆寺の伏蔵に関しては、いつまでも秘密のままであり続けてほしいと思います。どうぞそのままで、平和な日本であり続けてほしい、そんな願いを目の前の伏蔵に込めます。