宇陀市大宇陀迫間(はさま)の天益寺(てんやくじ)。
元伊勢伝承の阿紀神社上手にあるお寺です。枝垂桜の名所ですが、私が訪れたのは梅雨明け間近の7月初旬でした。寂びれた境内は特筆すべきものも無く、それがかえって印象に残りました。
天香久山天益寺。
木札に書かれていた「天香久山」が、おそらく山号なのでしょう。
本尊薬師如来も焼失!再建中の天益寺
天益寺は只今、火難からの復興途上のようです。
1999年1月31日の不審火により、本堂・大威徳堂・倉庫の三棟が全焼し、ご本尊の薬師如来立像も焼失してしまいました。迫間(はさま)という、いかにも山深い地にあるお寺です。消火活動もままならなかったのではないでしょうか。
天益寺手前の石仏。
阿紀神社よりさらに上手の大亀和尚民芸館、松源院を目指して歩いていると、右手に伸びるヘアピンカーブに行き着きます。ちょうどそこに小さな石仏が祀られていました。
天益寺の案内。
創建は正和2年(1313)つ伝えられている古刹。阿紀神社の元神宮寺。織田藩主3代目長頼が、眼病平癒祈願で参籠したと伝えられるが、平成11年1月31日に焼失し、現在再建中である。
江戸時代初期の松山藩主・織田長頼(ながより)が参籠していたようですね。
阿紀神社の元神宮寺と案内されています。
神仏習合によって生まれた神宮寺は、神社に付随する仏教寺院を意味します。元伊勢と称され、古来より名高い阿紀神社の神宮寺とあれば、それなりの格を有していたのではないでしょうか。
阿紀神社。
格式ある延喜式内社です。
燈籠の笠に生えた苔も、境内の御神気を助長します。
引戸は閉められ、中の様子を窺うことは出来ませんでした。
焼失以前は茅葺屋根の本堂が建っていたそうです。枝垂桜と相まって、いい雰囲気を醸していたものと思われます。
高台にある天益寺からの眺め。
大宇陀の市街地を見下ろします。
天益寺から松源院へ向かう途中、阿紀神社の社叢を望みます。
わずかに蛍の季節は逃していますが、阿紀神社の前を流れる清流は実に神々しい。幻想的な初夏の夜に訪れてみたいですね。来年こそはと思いつつ、既に幾歳月が流れています。
大亀和尚民芸館の裏山にひっそりと佇みます。両袖式の横穴式石室が開口しており、古墳好きの間でも人気の古墳です。
迫間の天益寺、次回は桜の季節に訪れてみようと思います。