今から10年前の『等彌神社紅葉ライトアップ』初日。
境内に不思議な植物が何本も直立している姿が見られました。神之森アート展を見学するために社務所へお邪魔した際、係の方にそのことを伺ってみました。
不思議な植物の名前は、高砂百合(タカサゴユリ)とのことでした。
高砂百合の莢(さや)。
さやがはじけて、もう既に中の種子が風で運ばれた後のようでした。
弾ける莢(さや)!高砂百合の名前の由来
高砂百合の開花する時期は8月なんだそうです。
花が散った後、種子を含んだ細長い莢(さや)が残されます。
さやの中は6列に分かれており、1列につき100~200個もの種子がぎっしりと詰まっています。パカッと口を開けた莢を、ちょうど真上から撮影していますが、確かに6つの小部屋に分かれている状態が見て取れます。
社務所前の高砂百合の莢。
横から見ると、Y字型に莢がはじけている様子が分かります。
11月末の等彌神社境内では、このような姿の高砂百合があちこちに見られます。ひとしきりの役目を終えた高砂百合が、境内に色付く紅葉とのコントラストを浮かび上がらせます。
等彌神社拝殿。
等彌神社の境内は意外と広いことに気付かされます。
数年前の夏に等彌神社を訪れた時、艶やかな姿の鬼百合(オニユリ)に釘付けになってしまいましたが、是非次回は高砂百合の開花時期に合わせて参詣してみたいと思います。
紅葉の名所であると同時に、百合の名所でもある等彌神社。
高砂百合は台湾原産のユリです。
高砂百合の種子は、大正12年に日本へ入って来たと言われます。
大神神社の結婚披露宴を数多く取り扱わせて頂いているせいか、高砂という言葉に敏感に反応してしまいます。そう言えば、等彌神社の鳥居横にも結婚式場の文字が見えます。どうやら等彌神社に於いても、晴れやかな結婚式を挙げることができるようです。
ただ無造作に直立しているだけのように見えますが、この一本一本に、盛夏には一輪の花が咲いていたのです。
細長いシュッとした感じの高砂百合の花を、パワースポットの空気を感じながら見てみたいものです。大神神社のささゆりは手厚く保護されている印象がありますが、台湾育ちの高砂百合には、どこか野放図で図太い感じがあります。
龍の描かれた干支絵馬と、等彌神社のシンボルである土偶の絵馬。
高砂百合という名前は、沖縄の方言に由来しています。台湾を指す言葉である「タカサング」に因んだ命名なんだそうです。
私が小学生の頃、とある自転車競技大会の全国大会に出場したのですが、沖縄代表の小学校が陣取る応援席に、「チバリヨー」と書かれた横断幕が掛けられていました。
まだ小学生だった私は、一体何を意味する言葉なのかちんぷんかんぷんだったわけですが、後で「頑張れ」を意味する言葉だと教えてもらって、なるほどと納得した思い出があります。高砂百合の種子は、台湾に近い沖縄にまずは入って来たのでしょうか?そんなことを感じさせるネーミングの由来ですよね。
高砂百合の莢を見ていると、鰻の蒲焼の由来にもなった“蒲の穂”を思い出します。寒い季節に、真っすぐに直立する姿が重なります。
命をつなぐ高砂百合の莢。
朝晩の冷え込みが厳しい晩秋の節、不思議な植物に出会えた一日でした。