桜井市笠地区のそば畑。
9月中旬に訪れてみると、見事に蕎麦の花が満開でした。
辺り一面に白い絨毯が敷き詰められたようです。カマドの神様として名高い笠山荒神にお参りの際は、是非ソバ畑まで足を延ばしてみて下さい。茎の先に小さい花をたくさん付けるタデ科の一年草に出会うことができます。
蕎麦の花。
植物学上はタデ科ソバ属に分類されるようです。いつも美味しく頂いている蕎麦ですが、その花を見ることは稀です。そばの花ってどんなふうに咲くんだろう?想像するにもそのヒントがどこにも見当たらないわけですが、百聞は一見に如かずですね。
9月中旬に見頃を迎えるソバの花
笠地区の蕎麦の花の見頃は9月中旬です。
毎年8月中旬に種を蒔き、白い花を付けるのは約一か月後の9月半ばとなります。10月末には刈り取り作業が行われ、11月半ばからは新蕎麦が提供されます。笠のそばは品質的にも優れ、毎年美味しい蕎麦を頂くことができます。
「荒神の里 笠そば処」の前に咲く蕎麦の花。
店頭の植え込みにも登場していました。道路を挟んで向かい側に、竈(かまど)の神様・笠山三宝荒神が鎮まります。
笠山荒神の社号標。
山深い地にある荒神さんです。私は桜井市民ですが、車で山道を登って行かなければならない笠山荒神は近くて遠い場所です。一年に一回足を運べばいい方ではないでしょうか。ちょっとした ”僻地感” がこの場所をさらに神聖なものにしています。
蕎麦畑への進入禁止を報せる看板。
名物のソバを保護するため、畑への進入が禁じられていました。決して肥沃な土地でなくとも育つのが蕎麦です。細い茎の先に幾つもの可憐な花を付け、風に揺らめいていました。一見するとか弱そうに見えますが、実は逞しい生命力に満ちているのでしょう。
シンボリックな立ち姿。
笠そば処の隣には直売所も設けられています。
蕎麦の花を観賞するために訪れたのですが、どこにソバ畑があるのか、さらに駐車場は近くにあるのか等、諸々の情報を持ち合わせていませんでした。そこで、直売所のおばさんに聞いてみるとアクセスルートはすぐに分かりました。
まずは笠そば処から西へ取ります。さらに角を右に曲がって下りて行けば蕎麦畑に行き着くとのことです。駐車場は特に無く、道端に車を停めておけばOKとのことでした。歩いて行くには少し遠いので、車で向かうことに致しました。今がちょうど見ごろという情報を得、期待に胸を膨らませます。
笠地区の蕎麦畑。
まずは遠望からということで、笠そば処横の駐車場奥から北方を望みます。
遠くからでもそれと分かる、一面の白い絨毯が広がっていました。
15haの農地に作付けされたソバ
この辺りで蕎麦の栽培が行われたのは平成4年からと言います。
昭和の時代には、この辺りにも蕎麦畑は無かったのですね。笠の気候風土との相性も良く、平成6年度以降は約15haの畑地で蕎麦が栽培されるようになりました。
そば畑に咲く蕎麦の花。
笠そば処から道を下り、まず最初に視界に入って来た畑です。数日前の集中豪雨の影響なのでしょうか、一定方向にソバの花がなぎ倒されている箇所がありました。
初めて見る蕎麦畑!
日本人の昼食の定番にもなっている蕎麦ですが、その畑をご存知の方はそう多くないでしょう。
蕎麦の花に近づいてみます。
茎が細い!
蕎麦は中央アジア原産の植物です。目の前に広がるそば畑は白一色に染まっていますが、赤系統の薄いピンク色の蕎麦もあるようです。直売所で手渡された周辺地図を見てみると、針インターチェンジへ向かう途中の三谷地区という場所に赤い蕎麦が咲くようです。時期的には10月になってからで、今はまだ開花していないものと思われます。想像するに、赤い蕎麦の花も綺麗でしょうね。
葉っぱの上にテントウムシが止まっています。
害虫を食べてくれるのかな?
蕎麦の実は黒い三角形をしていますが、その葉っぱはハート形に近いでしょうか。
小さく無数に付いている花は、いかにも「総状花序(そうじょうかじょ)」といった趣です。
長い坂道が窪地へと吸い込まれていきます。
笠地区のそば畑はこの道の両脇に広がっていました。道路脇に路上駐車し、そば畑の畦道へと入って行きます。ちょうど蕎麦畑と向き合うようにビニールハウスがありました。
何か花の苗を育てておられるようです。
今まで笠地区と言っても笠山荒神にお参りするだけでしたが、ちょっと足を延ばせばこんな場所もあったのですね。周辺探索の面白さを改めて知りました。
一本だけ背の高い蕎麦の花があったり、なかなか見ていて飽きません。
全く違うものではありますが、春の菜の花畑を思い出します。
整然と並んでいます。
こちらも花の苗のようですね。
ここで出荷の時を待っているのでしょうか。
今日は蕎麦が主役、あくまでもオマケのご案内です(笑)
向こうの山手に、今まで居た笠そば処が見えています。
見晴らしのいい場所ですね。
今春お泊り頂いた外国人のお客様が、そば殻の枕を大変お気に入りでした。
適度に湿気を吸い取り、その人の頭の形に合わせて柔らかく包み込んでくれるそば殻の枕。すっかりお気に召され、帰国後も使い続けたいとのお申し出でした。通販のアマゾンでも購入できる旨をお伝えし、今でもご使用中とのことです。
延々と続く道もいいですね。
遥か先まで見渡すことができます。
そば殻枕の実体は何なのでしょうか?
実は蕎麦の実の中にある白い粉(そば粉の原料)を取り除いた後、残りの黒い殻をかき集めて枕に詰め込んだものがそれです。様々な生活シーンで役立っていることが分かりますね。
蕎麦の葉はこんな形をしています。
長細いハート形と表現すればいいでしょうか。
こちらは茎の色が赤いですね。
所狭しと蕎麦が密集しています。
こうして見ると、基本的には五弁花なのでしょう。
一つ一つがとても小さい花です。
畑と畑の間の畦を進みながら、たくさんの人がシャッターを切っておられました。
ここは標高400~500mに当たり、心なしか平地よりも涼しいような気がします。
吹き抜ける風も心地いいです。
新蕎麦が食べられるのは11月とのこと・・・今から2か月後ですが、再訪して蕎麦をすすってみたくなりますね。
巷では蕎麦かうどんか、意見の分かれるところではないでしょうか。
栄養的にはどうでしょう、蕎麦の方が勝っているような印象があります。腹持ちはやはりうどんには敵わないでしょうか。あなたは蕎麦派?うどん派?昼食時のオフィス街で、いつも話題に上っていることでしょう。
笠そば。
奈良県桜井市といえば三輪そうめんが特産品として知られます。長い間桜井市は素麺で有名だったわけですが、平成の代に入り笠そばもそのネームバリューを上げています。
桜井市笠地区は、奈良県が促進する農地・水環境保全向上対策事業制度を活用し、桜井市の協力を得て、町興しの一環として営農促進、地域の活性化等を推進するために、15haの農地にソバの作付けを実施しています。 桜井市役所 桜井市笠区長
笠そば処の看板も立っていました。
水曜日が定休日です。
営業時間は10時~16時のようです。夜の営業はなさっていませんので、行かれる方は注意が必要ですね。
そば畑からの帰り道。
遥か彼方まで道が伸びています。
いかにも田舎の風景ですね。下っては登るこの長い坂道を見るだけでも、笠地区を訪れる価値はありそうです。
この後、斎宮山に鎮座する小夫天神社にお参りして帰路に就きました。
いよいよ今年もお彼岸ですね。厳しい残暑を終え、暦の上でも本格的な秋支度へと入って行きます。