奈良県立美術館で催されている「藤城清治 光のメルヘン展」。
影絵作家の第一人者が創り出す作品群の中に、三輪山を描いた素敵な絵が展示されていました。三輪山の背後から太陽が顔を覗かせ、杉玉や三ツ鳥居、大神神社大鳥居などがシンボリックに描かれています。
三輪山と大神神社のポストカード。
全ての展示作品を見終った後に、藤城清治氏の物販コーナーが設けられていました。たった今、館内で鑑賞してきたばかりの数々の作品がポストカードやクリアファイルとして販売されています。どれにしようか迷った挙句、やはり地元の三輪を象徴する風景に決めました。
西遊記や広島原爆ドーム、奈良の風景をモチーフにした影絵
奈良県立美術館で開催中の「藤城清治光のメルヘン展」の期間は4月2日(土)~7月3日(日)までです。
今年に入ってから美人画の展示で奈良県立美術館を訪れましたが、その時以来の訪問となります。今回の特別展を拝見するまで、実は藤城清治氏の名前を知りませんでした。でも、光のメルヘン展を観ている内に、どこかで目にしたことがあるような影絵だなと思いました。
メルヘンチックな作品が多いためでしょうか、女性の入館者が多かったような気が致します。
展示されている作品の数は相当数に上ります。よくもまぁ、これだけの作品を生み出すことができるものだなと感心させられました。作者のほとばしるエネルギーを感じずにはいられない特別展です。
作者の藤城清治氏は、御年92歳を迎えてなお精力的に創作活動を続けておられます。モノクロのシンプルな初期作品から最新作、油彩画、水彩画なども併せて楽しむことができます。
奈良県立美術館へのアクセスルート横に道案内の看板がありました。
メルヘンの世界に遊ぶことなど滅多にない私ではありますが、せっかくの機会です。ここはひとつ、藤城清治氏の世界に触れてみようと思います。
奈良県立美術館の入口付近。
今回の特別展示は全て撮影が禁止されています。誠に残念ながら中の様子をお伝えすることは出来ませんが、ご興味をお持ちの方は是非、奈良県立美術館まで足を運んでみて下さい。
私が言うのもなんですが、後悔することはないと思います。
お馴染みの西遊記をモチーフにした影絵も展示されています。オバマ大統領の広島訪問でタイムリーな話題にもなっていますが、原爆ドームを描いたものもあります。何気なく素通りしようとしても、つい足を止めてしまう ”何か” がそこにはありました。
奈良での展示会ということもあってか、東大寺二月堂や法隆寺釈迦三尊像、当麻寺などをモチーフにした作品にも出会えます。
物販コーナーで購入したおみやげを入れる袋。
三輪山と大神神社のポストカードのお値段は税込216円でした。レジで購入済みのポストカードをこの袋に入れてもらったわけですが、これもまた記念になりますね。
6月に催されるムジークフェストなら2016(音楽の祭典)の幟旗が立っています。
日の出を象徴する三輪山らしく、山の稜線から昇る太陽が描かれています。
後光のように差し込む光に照らし出される三ツ鳥居。その上には、まるで満月のように浮かび上がる杉玉。実際に美術館館内では、この作品前に水が張られ、ゆらゆらと水面が揺れていました。側面に映り込む風景もまた雅で、ハッと息を呑む瞬間でした。
三輪山を御神体とする大神神社を見事に表した作品ではないでしょうか。
酒の神様、薬の神様、縁結びの神様、商売繁盛の神様、それに太陽神と実に様々な側面を持つ一之宮です。
帰路の興福寺で記念撮影
博物館や美術館で写真が撮れないことはよくあります。
そんな時は記念品でも買って、近くの観光スポットで一緒に記念写真に収めておくのが一番です(笑)
猿沢池の枝垂れる柳にポストカードをかざします。
池の水面に目をやると、暑くなってきたからなのか少し澱みが見えますね。
悟りに至る階段と言われる興福寺の五十二段。
背後には五重塔が見えます。誰もが知る奈良の風景に、全く意味はありませんが三輪山を重ねます(笑)
ちなみに奈良県立美術館と興福寺は、登大路を挟んで南北に位置しています。登大路の横断歩道を渡れば、すぐ目の前にありますので迷うこともないでしょう。
藤城清治の物販コーナー。
前回の美人画の時と比べても、館内はすっかり模様替えされていました。幾つかある展示室には新たな仕切りが設けられ、より多くの作品が並んでいました。影絵という性格からなのか、館内の照明は落とされていました。色鮮やかな作品も多数見られ、すっかり藤城清治ワールドにはまってしまう私(笑)
大きな杉玉が印象的です。
巨大な志るしの杉玉が、実際に大神神社境内でも見られますが、明らかに実物よりも大きいですね。大鳥居の横幅にも匹敵するぐらいの大きさにデフォルメされています。
展示を見終えた後の休憩室兼図書閲覧室。
自動販売機が設置されていたので、缶コーヒーを飲んで一服します。
美術館の玄関前にはテントが張られていました。
初夏の日差しは強いですからね、用意されたベンチに腰掛ける人の姿も数多く見られました。
ポストカードを購入したレシートにも、藤城清治氏のメルヘンチックな影絵が!
光のメルヘン展の案内チラシには「生きるよろこび」、「平城の藤波」、「ケロヨンのドライブ」、「日輪」、「猫の相撲とり」などの作品が紹介されています。どれも色鮮やかで、光と影のコントラストが実に見事に表現されています。
ずいぶんどデカイ立看板。
奈良県立美術館は奈良県庁のすぐ傍にあります。
興福寺東金堂横の拝観受付には、外国人観光客の行列待ちが出来ていました。
最後にチラシに案内されている藤城清治氏のプロフィールを一部抜粋しておきます。
1924年4月17日生まれ。慶応大学経済学部卒業。在学中に猪熊弦一郎、脇田和に師事して新制派展などに油彩画を出品する一方、人形劇と影絵劇の創作を開始。卒業後、テアトル東京に就職。雑誌「暮しの手帖」に影絵を連載。人形と影絵の劇団ジェヌ・パントル(のちの木馬座)を結成。当時人気だったケロヨンのぬいぐるみも藤城が製作した。
昨年、講談社から「藤城清治の旅する影絵 日本」を出版。聖フランシスコの画本を4月に出版予定。
藤城清治氏は慶応ボーイなのですね。
ケロヨンのぬいぐるみを製作したのが藤城清治氏とのことです。蛙の着ぐるみ「ケロヨン」を知らない人はいないのではないでしょうか。超有名なキャラクターの生みの親が藤城清治氏だったのですね。
奈良県立美術館へのアクセスは近鉄奈良駅1番出口から徒歩5分、JR奈良駅からだと奈良交通バス「県庁前」下車すぐとなっています。