修験道の根本道場として知られる金峯山寺蔵王堂。
奈良県人である私でさえ、このお寺の名前を最初に見た時、その読み方には戸惑いを覚えました。金峯山寺と書いて、「きんぷせんじ」と読みます。お寺の名前に破裂音が入っているだけでも、十分に印象に残るのではないでしょうか。
金峯山寺蔵王堂の絵馬。
シンボルである桜が描かれていますね。修験道の開祖である役行者が、7世紀後半の白鳳年間に山上ヶ岳にある湧出ヶ岳で金剛蔵王権現を感得し、これを桜に刻んで安置したと伝えられます。
金峯山には黄金が埋められていた
吉野山の奥千本まで足を運ぶと、金峯神社というお社が鎮座しています。
吉野山の地主神で、古くから黄金の守護神として崇められてきました。藤原道長参拝の記録も残されており、境内には義経ゆかりの隠れ塔(蹴抜塔)がひっそりと建っています。
国宝の金峯山寺蔵王堂。
金峯山は万葉集にも歌われており、「み吉野の御金高(みかねのたけ)」と記されています。
機械遺産にも登録されている吉野山ロープウェイの吉野山駅。
ソチ五輪がもうすぐ開幕致しますが、オリンピック選手の大半が金メダルを目指します。そう、銀メダルを目指す人はいないのです。
やはり皆、金が欲しいのです。燦然と輝くゴールドは、今も昔も人々を引き付けてやみません。万葉集にも歌われた「御金の岳」は、いつしか時代を経て肉付けされ、金色に輝く極楽浄土の世界とみなされるようになりました。貴族の栄華を謳った藤原道長も、寛弘4年(1007)8月に、阿弥陀経・般若心経を金銅製経筒に納入し、山上に埋納したと伝えられます。
昭和59年の本堂修理に伴う発掘調査では、数多くの遺物に混じり、二体の黄金仏が出土しました。
金と深く交わる金峯山。
山上ヶ岳から吉野山蔵王堂に至る連山を金峯山というわけですが、この一帯は昔から金との関わりが非常に深かったことがうかがえます。
修理中の金峯山寺仁王門。
本格的な平成の大修理を控える国宝仁王門。
今回の修理工事においても、何らかの発掘調査が進められるのでしょうか。ますます金峯山の黄金伝説から目が離せませんね。