やすらぎの道沿いにある漢国神社にお参りして来ました。
読み方は漢国(かんごう)で、鎮座地も奈良市漢国町となっています。旧県社であり、かつては韓国・勘興・漢郷とも記されたようです。饅頭の祖神を祀る林神社が境内に祀られます。同じ通り沿いにある率川神社の初詣ついでに立ち寄ったのですが、率川神社とも深い関わりがあるようです。
漢国神社の御神燈。
高天交差点の南に位置し、背後には開化天皇陵が広がります。
漢国神社の歴代神主は大神(おおみわ)氏であったと伝えられます。推古天皇元年(593)に、大神君白堤(おおみわのきみしらつつみ)が勅を奉じて春日邑の率川と坂岡に社を建て、姫蹈鞴五十鈴姫命と大物主命を祀ったと言います。今まで知らなかったのですが、6月17日には率川神社と同じく三枝祭が執り行われています。
林浄因&漢国神社の社紋
漢国神社といえば、毎年4月19日開催の饅頭まつりが有名です。
饅頭の神様を祀る林神社の例大祭で、参拝者にはお茶と饅頭が振る舞われます。林浄因命(りんじょういんのみこと)は中国淅江省の人で、貞和5年(1349)に来朝し漢國神社の社頭に住まわれたそうです。我が国最初の饅頭を作り、好評を博したと伝わります。
漢国神社の社殿。
平安末期以降には、春日大社の末社となって興福寺の支配を受けることになります。
本殿は桃山時代の三間社流造檜皮葺で、大坂出陣の際に参詣した徳川家康奉納の鎧が伝わります。
社紋の松皮菱ですね。
菱紋の一種で、上下に小さな菱形が付いています。重ね菱の括りになるのですが、真ん中の菱形が一番大きいのが特徴です。
3つ菱紋が連なる三階菱(さんがいびし)という紋もありますが、三階菱は上にいくほど小さくなります。その点、この松皮菱は真ん中が大きく上下は同じ大きさです。中太菱(なかぶとびし)と言われる所以ですね。
松の表皮をはがした時の形に似ているところから、松皮菱の名前があります。
源九郎稲荷神社。
門を入ると、すぐ左手に控えています。2月の初午には「お火焚き祭」が行われる境内社です。
大和郡山市の源九郎さんはあまりにも有名ですが、漢国神社の境内に祀られているとは意外でした。
こちらが林神社。
奈良饅頭の元祖・林浄因やその子孫に当たる林宗二(はやしそうじ)らを仰ぎます。
林宗二は学者として活躍し、室町時代に刊行された国語辞書『節用集』の改定を行ったことで知られます。家業が饅頭屋だったことから、饅頭屋宗二と呼ばれていたようです。
社殿の前には饅頭が!
中国で肉まんとして食されていたものを、日本では中に小豆を入れて饅頭に・・・当時は画期的な食べ物としてもてはやされたことでしょう。時代を経てもなお、饅頭はやはり美味しいですからね(笑)
「林神社」の札が掛かります。
漢国神社の境内には舞台のような場所が設けられているのですが、まだ一度も舞台上の祭事を拝見したことがありません。5月5日には女性による奉納芸能「八乙女まつり」が催されるようです。入場無料とのことですが、いつか見てみたいと思います。
御祭神のオオモノヌシでしょうか。
紙面右上にも松皮菱が見られますね。
漢国神社が鎮まるやすらぎの道沿いには率川神社や伝香寺もあります。奈良の観光といえば東大寺や興福寺、春日大社ばかりが注目されがちですが、少し離れた場所にも見所に満ちた寺社がたくさんあります。是非足を延ばしてみられることをおすすめ致します。