葛城市寺口の浄願寺。
水子供養、子授け祈願で知られる浄土宗のお寺です。
子宝に恵まれなかった文徳天皇が祈願したところ、めでたく世継ぎの清和天皇が誕生したと伝わります。文徳天皇ゆかりの『子授け寺』として、今も全国各地から参詣者が後を絶ちません。
子授けにご利益のある浄願寺。
山門をくぐると、右手に手水処、正面には子授け地蔵尊が見えてきます。
とても綺麗な境内ですが、近々私道を挟んだ西側にお引越しされるようです。その場所では既に庭園が開放されていました。「癒しの庭」がコンセプトで、六道輪廻から着想した回遊式庭園が人気を呼びます。
稚児が慈母にすがり付く子授け地蔵尊
境内で一番印象強かったのが、本堂前の子授け地蔵尊です。
多くの稚児たちが慈母に優しく包み込まれ、子宝祈願に訪れる人を出迎えます。仏の慈悲を感じさせる、とても素敵な仏像ですね。
浄願寺の子授け地蔵尊。
円光背を背負い、右手には地蔵菩薩ゆかりの錫杖を持ちます。
このお地蔵様は杖をついて衆生の元へ降りて来て下さいます。その慈悲の動きが感じられるのです。流れるような衣文と共に、その優しが伝わって参ります。
浄願寺山門。
寺号標には「布施山浄願寺」と刻みます。
浄願寺の周辺一帯は、中世に布施氏が勢力を誇ったエリアです。布施氏の氏寺・置恩寺もすぐ近くにありますので、お時間のある方は是非足を運んでみて下さい。
本堂右手前の納骨堂。
正面に華頭窓を配した三階建ての建築物です。少し離れた場所からも見えており、三重塔を崩したようなフォルムが印象的です。
黄金に輝く蓮『地湧金蓮』。
バショウ科で、バナナの仲間。5~11月咲く。蓮に似た鮮やかな黄金色の花が地面から湧き出ているよう。茎の高さは60~80cm。
茎の頂部で花びらのように四方に開いている部分は苞で、直径30cmほどになります。
地湧金蓮(ちゆうきんれん)と読みます。
耐寒バナナとも呼ばれ、中国雲南省原産の植物なんだそうです。
とても珍しく、植物園にでも行かない限り見られないのではと思わせます。チユウキンレンは、浄願寺の境内でも観賞できるのでしょうか。
二塚古墳から浄願寺へアクセス
今回、私は二塚古墳から浄願寺を目指しました。
途中で少し遠回りしてしまったようですが、その辺りも含めてアクセスルートをご案内します。
二塚古墳から坂道を下って来ると、民家の前に道標が立っていました。示す方向に従いながら民家と竹林の間を進みます。
この細い道を辿ります。
この辺りは最寄りの近鉄新庄駅からも少し離れています。タクシーでも7~8分はかかりますので、まずはマイカーで「近畿自然歩道 寺口駐車場」まで行かれることをおすすめします。寺口駐車場のすぐ北側が浄願寺です。今回は二塚古墳から向かっていますので、もう少しお付き合い下さい。
こんな所に出て来ました。
後で分かったのですが、この一つ手前の道を右折すれば最短距離だったのかもしれません。右手の大きな石垣は浄願寺の「癒しの庭」の背後に当たるものと思われます。
綺麗な芝生と石垣。
此処はどうやら浄願寺の境内ではないようです。
葛城山系の方を望みます。
ぐるりと回り込むように右折します。
浄願寺駐車場とおトイレ。
おトイレの奥左側が浄願寺の境内で、道を挟んだ右側には庭園が広がっていました。浄願寺の山門へは、おトイレの角を左に曲がります。
しばらく進むと、左手にお像が祀られていました。ブロック塀の隙間から見えるのは、どうやら賓頭盧尊者のようです。「びんずる園」の看板が出ていますね。
ここもおそらく浄願寺とは関係のない場所だと思われます。
お寺の本堂外陣でよく見かける賓頭盧(びんずる)さんです。
参拝客から度々撫でられるのでしょう、お顔や体が黒光りしていました。
左手に持つのは宝珠でしょうか。
袈裟を着ておられるようです。
さらに進んで行くと、突き当りに石像が祀られていました。
ここを右手に取ると、いよいよ浄願寺の山門です。
回り込みながらも、なんとか到着しました。
ちなみにこの道を真っ直ぐ行くと、程なく右手に寺口駐車場が見えて参ります。
浄願寺の山門。
表門に至るまで急な石段が続きます。
山門入ってすぐの手水処。
帽子を被ったお地蔵さんでしょうか。緑豊かな境内ですね。
本堂と子授け地蔵尊。
本堂前には石灯籠が二基建ちます。
浄願寺の本尊は阿弥陀如来立像です。子宝如来とも称され、第55代文徳天皇ゆかりの仏像です。
文徳天皇は平安時代の天皇で、そのご治世中には藤原氏の勢力が拡大したと言います。文徳天皇の陵墓は、京都市右京区太秦三尾町にある田邑陵(たむらのみささぎ)とされます。
小振りの石燈籠。
可愛いですね、その火袋には月の形が見られます。
納骨堂の手前には、観音様らしき仏像が立っていました。
そんなに広くはない境内ですが、様々なものが凝縮しています。
真下から見上げます。
これはまたとない建物ですね。
納骨堂に架かる橋。
苔生した風合いが目を引きます。
今回は時間の都合上、六道輪廻をテーマにした庭園を拝観することは叶いませんでした。噂によれば、その庭園は体験型テーマパークのようで面白いとのことです。大阪平野(ひらの)の全興寺(せんこうじ)なども、さしずめ仏教テーマパークを思わせます。色々なアプローチがあっていいんだろうと思います。