奈良県生駒市にある長弓寺(ちょうきゅうじ)。
長弓寺は桜の名所ですが、訪れた初夏には紫陽花の花が咲いていました。
長弓寺本堂と紫陽花。
長弓寺の本堂は鎌倉時代の建立で国宝に指定されています。
創建は天平年間に遡り、聖武天皇の勅願により行基が建立したと伝わります。聖武天皇の弓を材料に、本尊十一面観音の頂上仏面を彫刻して創建されました。そこには長弓寺創建の悲しいエピソードが残されています。
まゆみの鐘と長弓寺創建悲話
富雄の豪族であった真弓長弓(まゆみたけゆみ)。
子の長麻呂を連れて聖武天皇の鳥狩に従っていました。
狩りの最中、鳥を追い出していたところ長麻呂の矢に当たって絶命します。その悲運な最期を嘆いた天皇が、行基に命じて長弓寺が創建されたと伝えられます。
檜皮葺の屋根のラインが美しい長弓寺本堂。
優美に描かれた曲線は、今にも天空に舞い上がりそうな雰囲気を醸し出します。
長弓寺に開花する紫陽花。
ボリュームを感じさせる八重咲きの紫陽花ですね。
長弓寺の鐘の向こう側に国宝の本堂が見えます。
長弓寺の山号 「真弓山」 から、”まゆみの鐘” と呼ばれています。
長弓寺の本堂は、正面5間・側面6間の入母屋造り。
棟木にある墨書銘より弘安2年(1279)の建立であることが分かっています。
本尊の木造十一面観音立像(平安時代)と黒漆厨子(鎌倉時代)は重要文化財に指定されています。
願い事を叶えてくれる珠と言われる宝珠(ほうじゅ)に似せた擬宝珠(ぎぼし)。
橋の欄干にはよく見られますよね。その向こう側に本堂が見えてきました。屋根のみならず、和様を主体に大仏様、唐様が混用された細部も実に立派な本堂です。
長弓寺は富雄から学園前へ抜ける道の脇に佇みます。
この道を進んで行けば、学園前につながっています。
地蔵堂と紫陽花。
長弓寺創建に語り継がれる悲しい逸話。
聖武天皇の従者・小野真弓長弓が、子の長麻呂の矢に当たって絶命、長麻呂はこれを悔いて出家したといいます。長弓寺の近くには、”長弓の墓” と伝えられる真弓塚があるようです。
今は立派な姿を見せる本堂ですが、昭和9年の室戸台風によって大破した歴史があります。
修復費用を捻出するため、長弓寺の三重塔が売却されたお話は有名ですよね。
東京のグランドプリンスホテル高輪の庭園にある三重塔の初層は、まぎれもなくここ長弓寺にあったものなんです。
長弓寺の駐車場は無料。
拝観料は志納(200円以上)となっています。