女郎花(おみなえし)って面白い名前の花ですよね。
以前から女郎花の名前の由来が気になっていたのですが、9月に高松塚古墳を訪れた際にタイミング良く咲いていました。秋に開花する女郎花ですが、分類上はオミナエシ科に属します。そして、その花言葉は「親切」とされます。
高松塚古墳のオミナエシ。
小さな黄色い花が集まり、花序を形成しています。同じ秋の花でも、ダリアや薔薇とは違い、慎ましやかな印象を与えます。萩などもそうですが、古代の万葉人たちは控えめな花を愛でたようです。おそらく女郎花もそんな花の一つだったに違いありません。
女郎花の語源は粟飯の別名「女飯」
女郎花の名前の由来ですが、どうやら粟飯(あわめし)に端を発しているようです。
黄色い小花が粟飯によく似ているため、粟飯の別名である女飯(おんなめし)が当てられました。「おんなめし」がいつの間にか「おみなえし」に訛ったのではないかと言われています。要するに言葉の転訛ですね。長い年月の間に、言葉は少しずつ変化していくものです。
オミナエシの起源を辿れば、女飯(おんなめし)に行き着く。
言葉とは面白いものですね。
大神神社の花火大会で知られる「おんぱら祭」の「おんぱら」も、実は「お祓い」に由来しています。もうすぐクリスマスですが、サンタクロースの語源も、東ローマ帝国小アジアの司教だった聖ニコラウスに由来します。いずれも転訛ですね。
女郎花の咲く場所から右へ折れると、ススキが群生していました。
ススキの根元には、飛鳥名物のナンバンギセルが顔を出していました。
ちょうどこの辺りだったと記憶しているのですが、数年前の早春に訪れた際、春を告げる満作(マンサク)が咲いていたのを思い出します。早春に「まず咲く」ことから、満作(まんさく)と名付けられています。なぜか不思議なシンクロニシティを感じてしまいます(笑) そう、マンサクの命名も転訛によるものなのです。
国営飛鳥歴史公園の高松塚古墳地区にある展望スペース。
階段を上がって右手に開けていました。
ここでお弁当でも広げたら、さぞ開放感が味わえることでしょう。
ナンバンギセル。
なるほど、煙管(キセル)のような形状をしています。
オミナエシとは違い、よく足元を確認しないと見つけることができません。
秋の七草に名を連ねるオミナエシ。
花期は8月から10月で、原産地も日本です。
純国産の花なんですね。
ごく自然に、私たちのDNAにも擦り込まれていることでしょう。
オミナエシを美しいと感じる心は、古代も現代も同じです。
平安時代の紫式部日記を紐解けば、
橋の南なる女郎花のいみじう盛りなるを・・・
と記されています。決して派手ではありませんが、当時から人々の心を捉えて離さない花だったのではないでしょうか。自然に目を向ければ、そこには時を超えたつながりが感じられます。