客室内の意匠をご案内致します。
竹にも色々な種類があって、図面竹(ずめんたけ)という面白い竹があります。
硫酸と硝酸を合わせた薬剤に砂などを混ぜ、独特の模様を付けたものを言います。竹の幹は丸いものだとばかり思っていましたが、四角い木枠をはめて四角い竹に成長させます。こうして出来た図面角竹(ずめんかくちく)は、見る者を魅了します。
床の間の台として使われる図面角竹。
真ん中が少し凹んでいますね。
竹の成長に合わせてはめる型枠ですが、L字形の木枠を2つ合わせるようです。敢えて少し小さめの木枠で作られたのかもしれません。床の間という場所故、爪先に当たらないよう配慮されている可能性も伺えます。
天井にも渡される図面角竹
ご宿泊頂くお客様の目線は、ある程度決まっています。
スマホやテレビが介在する情報化社会。旅先でもついテレビのスイッチを付けてしまいがちです。客室内をぐるりと見回すことも少なくなりましたが、天井に目を向けてみるのも一興です。
天井の図面角竹。
天井一面にも、細い端材のような竹が組まれています。
四角い三本の図面竹は、見ようによっては虎斑竹(とらふだけ)に似ているような気もします。虎斑竹の産地は限られており、なぜか高知県須崎市安和でしか採れないようです。やはりこれは孟宗竹でしょうか?こういったことは、先々代の増築の際に聞いておくべきでしたね。
床の間の前板上に這いつくばって撮影。
極限のローアングルでないと、この意匠を確認することは出来ません。目に見えないような所にまで工夫が凝らされています。
手前に写り込んでいるのは畳の縁です。
その向こうに前板(まえいた)、床框(とこかまち)の図面角竹と続きます。
職人さんの心意気が伝わってきますね。
料理旅館大正楼の玄関前。
板状の石畳が敷き詰められています。
表情を持った竹が、客室の天井に張り巡らされます。
ちなみにこの意匠が見られるのは控え間ですので、なおのこと注目される機会がありません。
客室の上り口に三角形の板が渡されます。
この客間は少人数のご会食にもご利用頂いています。
同じ文様のものは無いはずです。
人工的に作られるデザインですが、竹の成長具合によって様々な模様が現れます。気候条件にも左右されることでしょう。
日本旅館の楽しみ方の一つでしょう。
建築資材や職人さんに想いを馳せれば、狭い空間にも豊かな広がりが生まれます。
古来より大切にされてきた竹です。
吉祥の”松竹梅”にも名を連ねる竹は、成長のスピードが早いことで知られます。見る見るうちに天を突くほどの勢いで伸びていく竹!そんな竹にあやかろうとした先人たちの思いに触れます。
畳から床の間への結界に、五本の柱が立ちます。
床の間によく見られる物入れですが、地袋(じぶくろ)でもなく天袋(てんぶくろ)でもありません。宙に浮く形で、床の間を飾っています。客室の遊び空間に目を向けてみるのも面白そうですね。