客室の控え間に、扇流しの文様を描いた襖があります。
流水紋に扇という日本の伝統的な文様です。
結婚式の引出物としても「席札扇子」が人気ですが、末広がりの形状が縁起の良さを伺わせます。
扇流し(おうぎながし)の文様。
優雅な流水扇は、器物文様などにも多く見られます。
水の上を流れるものを意匠化したデザインを「流し・流れ」と言います。桜流しや流れ菊なども知られ、その流麗な文様が目を引きます。右上の扇には、「青海波」の文様も見られますね。
平安時代にもてはやされた扇
扇の発祥地は日本です。
平安時代に貴族に使われていた檜扇(ひおうぎ)ですが、男性用は無文で、束帯着用の際に笏の代用としても使われていたそうです。女性用には美しい大和絵が描かれ、衵扇(あこめ)と呼ばれていました。
床の間には、成瓢(なりひさご)の掛軸が掛かります。
蔦や葉っぱの付いた状態の瓢箪を「なりひさご」と言い、実の中の種子を取って乾燥させた瓢箪と区別します。成瓢は「生瓢」とも書くようです。
布張りの襖に、流麗な扇流しの文様が描かれます。
ちなみに、この襖の奥には寝具が収納されています。
客室内の襖。
平安後期になると、開いた形がコウモリに似ていることから、蝙蝠(かわほり)という細い骨に紙を張った「扇」が出来たと伝えられます。現在も私たちがよく目にする扇の姿ですね。