カゲキヨという名前の魚。
硬い鱗を持つエビスダイの別名を”カゲキヨ”と言います。
源氏に抵抗を続けた平氏の平景清(藤原景清)にちなんだネーミングです。我慢に我慢を重ね、最後に怒りを爆発させた牢破りで知られる景清。全身にガラスのような鱗をまとい、グッと内にパワーを込めるエビスダイの姿と重なります。
カゲキヨの大きな口。
景清が怒りを爆発させたシーンを思い起こします。
エビスダイは九州方面を中心に、比較的暖かい海に棲息しています。イットウダイ科の魚は熱帯域に多く、エビスダイもキンメダイ目イットウダイ科アカマツカサダイ亜科エビスダイ属に分類されます。
歌舞伎の荒事!牢破りの景清
平景清をモチーフにした演目。
歌舞伎を中心に能舞台などでも演じられているようです。
中世における源平合戦は、今もなお様々な形で語り継がれているんですね。
内に力を込めるカゲキヨ(恵比須鯛)。
歌舞伎の舞台上の平景清は赤い衣裳を身に着けているようです。きっとその赤い衣裳がエビスダイを想起させるのでしょう。
歌舞伎のストーリーはこんな感じです。
源氏に捕らえられた景清は、洞窟の中の牢屋に入れられます。
ここから景清の抵抗が始まります。
敵からもらったものは食べたくない、と水さえ口にしなかったと言います。源氏の武将は、平家の宝のありかを聞き出そうとします。ところが、景清は頑として答えません。業を煮やした源氏の武将は、景清の妻と娘を牢の前に連れてきて責めます。それを目の当たりにした景清は、これまでずっと耐え忍んできた怒りを爆発させます。
牢を破って大暴れする景清!
歌舞伎の荒事で人気の「牢破り」のワンシーンですね。
カゲキヨの舟盛り。
魚に地方名は付き物ですが、歴史上の人物名を付せられた魚も珍しいでしょう。
カゲキヨの大きな口。
景清に対する見せしめで、卑怯な手を使った源氏に対する怒り。
歴史物語と照らし合わせ、魚の姿を観賞するのも乙なものです。
グッとこらえて、そのエネルギーを爆発させた平景清。その心の動きを投影するようなエビスダイの鎧(よろい)。固く閉ざしたウロコの中には、瑞々しくはち切れんばかりの白身が詰まっていました。