大正楼客室に飾られている虎の掛軸。
以前にご宿泊頂いたお客様から、「こちらが移動すると、それを追い掛けるように虎の目が動いているように見える」とお伝え頂いたことがあります。なるほどそうなのかなと思い、試しに虎の掛軸の前に立って右に左にと動いてみました。確かに私を追い掛けるように、虎の目が後を付いて来るようにも見えてきます(笑)
八方睨みの虎の掛軸。
目の玉がはっきり描かれていないところが味噌なのでしょうか。
開運上昇、魔除けにもなる虎の掛軸
世界中から人気を集めるキティちゃんには口が描かれていません。
見る人の気持ちを反映して、笑ったり怒ったり悲しんだりすると言われるキティちゃん。そんなキティちゃんともどこか似たような印象を受けます。本当は睨まれているわけでもないのに、どうも睨まれているような気がする。この掛軸に目玉がはっきり描かれてさえいれば、そのような錯覚に陥ることもないのかもしれません。
大正楼中庭。
一日にして千里を行き、千里を返すと言い伝えられる虎。
それだけ強靭な生命力を持っていることの例えとして使われるフレーズです。
八方睨みの虎は外敵に睨みを利かせ、家運の隆盛に寄与します。群れを作るライオンとは違って、単独行動のイメージがある虎には神秘的な雰囲気が漂います。虎独特の縞模様も、深い森林の中を生き抜くためのカムフラージュですよね。
季節を彩る掛軸も、訪れた宿泊客の心を和ませます。
動物の掛軸に、自然の草木をモチーフにした掛軸等々、どれを見ても書き手の心が伝わってきて飽きることがありません。
床の間に掛軸。
日本古来の伝統的な設えです。
八方睨みといえば、京都の妙心寺法堂の天井に描かれた八方睨みの龍を思い出します。
天井を仰ぎ見ながら、ぐるぐると堂内を回ると不思議なことに龍の表情がみるみる変わっていきます。魔法に掛けられたような瞬間を味わうことができます。絵師の秘密を知りたいものですね。
東の青龍に西の白虎。
龍とよく引き合いに出される虎ですが、虎は観音様の使いであるとも言われます。怖いイメージが付きまとう虎ですが、私たちを災難から守ってくれるとても有難い存在です。
梅の掛軸ですね。
客室の掛軸で季節を知る。
四季に恵まれた日本を楽しむ作法が、こんなところにも一つあるのではないでしょうか。