深海魚をシンボライズする唐人(とうじん)。
タラ目ソコダラ科の魚で、ゲホウ、チョッピーなどの別名も持ち合わせます。
その見た目は、やはり気持ち悪い(笑) ところが、外見とは真逆で淡白で美味しい魚です。トウジンの肝は濃厚で、なめろうにすると格別でした。
トウジンの姿造り。
紅白花大根を脇に置き、小波胡瓜、寄せ木大根、竹胡瓜などで華やかに飾り立てます。
あっさりした刺身!環境問題の旗頭・トウジン
不気味な姿をしたトウジン。
第一背鰭がピンと立ち、尾鰭の先へいくほど細くなっています。ソコダラ科特有の体形で、ヘリダラなどにもよく似ていますね。
ゲホッ!
尖がった頭に、突き出た口。深海から引き揚げられる際、この口から胃袋が飛び出ることもよくあるようです。ゲホッと擬音語を使いましたが、ゲホウの由来でもあります。頭部は硬く、ザラザラした触感でした。
トウジンの刺身。
今回は皮を引きましたが、淡白な身ゆえ皮付きのまま刺身にしてもいいでしょう。
尾の先をくるりと垂らします。
頭部のトンガリは他の魚では見られません。深海にはキホウボウなどの”外骨格”の魚がいますが、トウジンの頭も外骨格を思わせます。
まるでサーフィンボード(笑)
口が下に付いており、鮫を連想させます。尖がった吻(ふん)の表面は硬いのですが、裏面はぷよぷよと柔らかい構造です。本当に不思議ですね。
比較的大きな魚で、全長70cm前後にもなるようです。
これで手のひらサイズなら、フィギュアにでもしたくなります。
トウジンと沖ギス。
開いた口から小さな歯が見えます。
胸びれや腹びれはとても小さいです。
大きな頭の割には、実にコンパクトな鰭(ひれ)。姿造りには向かない魚ですね。頭を立てるのに一苦労です(笑) 重い頭を支える腹びれが、あまりにも心もとない(^-^;
中庭を背にすると、トンガリ部分がやや透けて見えます。
深海魚としては有名な部類に入りますが、それでも全国区とまではいかないでしょう。基本的には産地周辺でのみ消費されています。漁師さんを中心に、漁港周辺では美味しい魚と認識されていますが、一歩外へ出ると未だに妖怪のような見た目に惑わされます。
生産者支援や食品ロス問題にも一石を投じるトウジン。
「今あるもの」に焦点を当て、無駄なく使い切っていきたいですね。
新たな箱モノは要らないし、高価な鮪や鯛にばかり頼っていてはいけないのです。現状の組み合わせや、巧みなコラージュの中にこそ未来があります。様々な深海魚に触れると、”寄せ集めの再編作業”を思い出します。