神がうしはく国。
うしはくとは、神道における古語で「支配する、領知する」という意味を表します。
漢字で書けば、「領(うしは)く」となります。
神様が山や海、一定の土地を領有することを指す古語。
神の力を表す「大人(うし)」と、身につける意味の「佩(は)く」が語源になっているようです。
古事記の国譲り神話『汝がうしはける葦原中國』
貴人・富者などの尊敬語を大人(うし)と表現しますが、この場合の大人(うし)は神様に通じます。
「うし」は主(ぬし)にも通じており、言葉の成り立ちの面白さが感じられます。
古事記の国譲り神話の中で、天照大神の使いが大国主神が領有する日本の国を譲るように求めた件がありますが、そこには以下のように記載されています。
汝がうしはける葦原中國(あしはらのなかつくに)は我が御子のしらさむ國
”しらさむ國” の「しらす」は「知る」の尊敬語であり、治める・統治するという意味を持ちます。
「うしはく」は神々に対して用い、「しらす」は主に皇室に対して用いられる言葉です。神体山・三輪山の麓には、第10代崇神天皇のお宮跡がありますが、崇神天皇のことを「初国(はつくに)しらすすめらみこと」と称します。
志貴御縣坐神社の磐座!磯城瑞籬宮跡
山の辺の道の外れにある志貴御縣坐(しきのみあがたにます)神社。 大己貴神(おおなむちのかみ)を祀り、崇神天皇のお宮跡と伝わります。 三輪小学校の卒業生にとっては、マラソンコース沿いの神社という位置付けでしょう。毎年冬になると、学校行事として...
天皇の「しらす」に対し、神の「うしはく」。
現代文では滅多に目にしない「うしはく」ではありますが、これを機に覚えておきましょう。