中庭にアクセントを付ける雪見灯籠。
「雪見灯籠」は大別すると、丸雪見と六角雪見に分かれます。
六角雪見型灯籠は火袋が六角形なのに対し、丸雪見型燈籠は全体的に丸みを帯びたデザインです。その形状から、宿泊客に柔らかい印象を与えています。
大正楼中庭の丸雪見型燈籠。
構成部位は上から順に、宝珠、笠、火袋、受(うけ)、脚と続きます。雪見灯籠の脚は三本、もしくは四本から成ります。当館の丸雪見の脚は三本です。どの角度から見ても、三本の脚が確認出来ます。
陰陽を表す日月の火口
日本の美は”陰陽”で表されます。
西洋文化のように左右対称のシンメトリーではなく、敢えてバランスを崩すことによって全体の調和を図ります。少しずれている、昔の人はそこに”宇宙”を見たのかもしれません。きっちりとコンプリートさせずに、敢えて完成間近で置いておく。かの龍安寺の石庭にも通じる考え方です。
火袋に見られる円形。
「日・太陽」を表す火口ですね。この反対側には、冒頭の三日月の火口が開いています。
笠の部分にはこれといった彫刻が見られず、簡素化された印象を受けます。細かなデザインを省いた「古代丸雪見」ではないかと思われます。脚の先にも、いわゆる「猫足」は見当たりません。
雪見灯籠は池の傍に配置されることが多いと聞きます。
きっと夜の帳が下りた水面を照らしていたのでしょう。
客室の活花。
雪見灯籠の名前の由来は何なのでしょうか。
一説によれば、笠に積もった雪を観賞したことに因むのではないかと伝わります。
大きく広がる笠。
確かにこの笠の上なら、しんしんと雪が降り積もりそうです。
回廊脇の檜扇。
石燈籠にも色々な種類がありますが、背の低い丸みを帯びたデザインもいいですね。
寂しげにスッと立つ濡鷺型燈籠とは対照的です。当館の中庭は夕暮れ時になるとライトアップされます。暗闇に浮かび上がる丸雪見を見ていると、時間の経つのを忘れてしまいそうになります。