談山神社へ上がって行く多武峰街道沿いに「八講桜」の案内板があります。
以前から気にはなっていたのですが、今回初めて桜井市今井谷にある八講桜を見に行きました。
浅古交差点から坂道に入り、聖林寺を右手に見ながらさらに上方を目指します。しばらく進むと、右手に八講桜へと通じる道が見えてきます。
八講桜の駐車場。
案内板には括弧書きで、「満願寺しだれ桜」と記されています。現在は今井谷地区の集会所になっている満願寺の脇に、樹齢300年の枝垂桜が咲き誇ります。
期待を胸に、いざ八講桜の花見に向かったのですが、残念ながら今年はもう散ってしまった後でした。 空振りに終わった八講桜でしたが、来年以降にここを訪れる方々のためにもレポートを残しておこうと思います。
藤原鎌足を祀る八講祭に植えられたという伝説の桜
八講桜の名前の由来は、藤原鎌足を祀る八講祭に起因しています。
八講桜のあるこの辺りは、藤原鎌足ゆかりの地でもあります。近くの談山神社の御祭神は藤原鎌足であり、十一面観音で知られる聖林寺は妙楽寺(現談山神社)の別院として創建されています。鎌足伝説に彩られた八講桜ということが言えそうです。
見頃を過ぎた八講桜。
丘の上の片隅に、その雄姿を称えます。
訪れた時期は4月の上旬でしたが、既に散り終えた状況でした。すれ違った今井谷在住の方にお伺いすると、今年は3月末頃が満開だったようです。その年によって開花状況が異なるのが桜です。咲いたと思ったら、もう散り始めている・・・毎年のことですが、逃げ足の速い桜を追い掛けるのは大変ですね。
満願寺の枝垂桜は桜井市指定文化財です。
満願寺西側の斜面の肩にあり、樹高約25m。1.3mのところでの幹回りは3.94mあって、地上4mのところで3本の支幹にわかれ、枝は約5mにわたり広がっている。多武峰談山神社の元に、八講祭を行う寺院にシダレザクラを植えたとの言い伝えがあるので、樹齢は約300年を数えることになる。4月上旬に満開となる。
う~ん、解説パネルにも「4月上旬に満開」と案内されているのですが、事はそう容易くはないようです。
幹の途中から三本の支幹に分かれている八講桜。
うねりながら下界を見下ろすように伸びるその姿は一見の価値があります。
八講桜の花見見物アクセスルート
八講桜はどこにあるのか?
それは見上げる丘の上にあります。
丘陵の上に登って行く際には、主に二つのルートがあります。最短距離でアクセスする際は急な坂道を、安全面を重視するなら整備されたやや緩やかな坂道を選ぶことになります。
私は今回、行きは急な坂道、帰りは地元の方と話をしながら緩やかな坂道を選びました。
駐車場に車を停めて道を横切ったところ。
小屋が建っていますね。桜が満開の時はここで駐車料金を徴収しておられるのかもしれません。
この道を真っ直ぐ進んで行くと、高家の地蔵や平野古墳にアクセスします。その道中の右手には見事な桜が開花していました。今井谷の方のお話を思い起こせば、おそらく地元の会社・中和営繕さんが植えられた桜の群生ではないかと思われます。
小屋から丘陵を見上げます。
ありました、ありました、どうやらアレが八講桜のようです。
降りかかるような枝振りは、正しく樹齢300年を誇る枝垂桜そのものです。
この道を辿ります。
左手に細い道が付いているのが見えますが、ここを左に曲がります。
角度を変えて、ここがアクセスポイントですね。
もう視線の向こうには八講桜が見えています。
八講桜の奥に建物が見えていますが、あれが満願寺(今井谷集会所)です。意外と大きな仏像が祀られているようで、是非見学してみたかったのですが、区長さんが鍵をお持ちのようで中には入れませんでした。
急な坂道ですね。
しかも細い!
雨の降った後で、足元はぬかるんでいました。滑り落ちないように注意しながら登って行きました。
丘のてっぺんに上がったところ。
下を見下ろすと、道路脇の八講桜駐車場が見えています。いや~、かなり高い場所ですね。
支柱に支えられる八講桜。
こうして見ると、散った後の桜にもどこか風情が感じられます。
支柱の足元には、たくさんの花弁が落ちていました。
かなり頑丈な支柱のようです。足元はコンクリートで固められ、歴史ある巨木を支えています。
苔生した幹も素敵です。
背後には竹林があり、その緑とピンクの光景は見る者を釘付けにするのではないでしょうか。八講桜の生える場所を考えてみれば、その樹勢が気になるところではありますね。このまま数百年間と、後世に花を残していってほしいものです。
満願寺と吉野川分水
八講桜は満願寺のすぐ脇にあります。
私は最初、この場所に辿り着いた時にまさかこの建物が満願寺だとは思ってもみませんでした。それもそのはず、とてもお寺とは思えない造りの建物なのです。
満願寺と八講桜。
どう見ても、普通の民家ですよね。
満願寺前のアスファルト上にも桜の花びらが敷き詰められていました。
今井谷の方のお話では、こういう造りにしておくと補助金が下りるのだそうです(笑) 今では今井谷の集会所として利用されているようですが、中には立派な仏像も祀られているそうです。拝観の機会があれば、是非また訪れてみようと思います。
八講桜の木札。
命名された記念日が記されているのでしょうか。
遥か下界を見下ろす八講桜。
湾曲した道と見事な枝振りが重なります。
3月末から4月上旬にかけて、今年は大変忙しくなかなか外出するチャンスに恵まれませんでした。
昨今は外国人観光客も桜を目当てに来日されます。
日本の春=桜というイメージが定着しているようで、全国各地の桜の名所も賑わったものと思われます。当館近くにある大美和の杜展望台の枝垂桜も例年以上に好評でした。ご案内差し上げたお客様の大半が大喜びでお帰りになられました。
竹林の手前にはお地蔵さんも祀られていました。
地元の方々によって、大切に守られている様子が伺えます。
来年こそは!
そう思わせてくれる桜の名所です。
吉野川分水の工事跡。
八講桜から今井谷の集落方面へ通じる道に出ると、何やら工事跡のようなものが残っていました。
この下を吉野川分水が通っているようです。今井谷の集落に吉野川分水の水が引かれたのは、ごく最近のことだそうです。これぞ、まさしく ”じもトピ” ですね。
地元の方と会話しながら緩やかな坂道を下って来ると、左手に愛宕大権現の標石が建っていました。
その向こう側に、先ほどの八講桜の駐車場が見えています。
道路に下りて川沿いに目をやると、綺麗な桜が咲いていました。
これも中和営繕さんお手植えの桜なのでしょうか。
駐車場脇の桜はまだ残っています。
ちょっと救われたような気分(笑)
帰路の途中、安倍文殊院に立ち寄って桜を楽しみます。
本堂右手前の枝垂桜が見事に開花していました。
目線の近くで接写できる枝垂桜はイイですよね。桜を手前に、背後には建物を入れることができます。
八講桜の周辺観光スポットとしては、等彌神社、兜塚古墳、秋殿南古墳、聖林寺、談山神社などがオススメです。桜見物のついでに奈良の歴史の深さに触れてみるのもいいのではないでしょうか。