大神神社の摂社・綱越神社で催される夏のおんぱら祭。
7月31日の例祭で、参列者全員が唱える歌があります。
水無月の 夏越の祓 する人は 千歳の命 延ぶといふなり
綱越神社の提灯。
拾遺和歌集の歌を唱えながら、上半期に身に付いてしまった罪や穢れを祓い清めます。おんぱら祭はお祓い神事に端を発します。
おんぱら祭は二十四節気の大暑(たいしょ)期間中に執り行われます。水無月と言うとなんだか涼しげですが、実際のところは酷暑のシーズンに当たります。
セスナ機祝賀飛行!音楽隊の市内パレード
子供の頃、毎年7月31日が近づくと胸の高鳴りを覚えました。
桜井市民にとって、綱越神社のおんぱら祭は一大イベントなのです。
綱越神社の茅の輪くぐり。
この輪っかの中をくぐって、心身の穢れを祓います。
水温が高くなるこの時期、魚が深部に移動して釣れなくなることを土用隠れと申しますが、茅の輪をくぐって土用隠れのように別世界に行きたくもなります(笑)
ドラえもんの秘密道具・どこでもドアがふと頭の中をよぎります。クーラーの無い時代、涼しい異世界への入口をこの茅の輪に見た人もいたのかもしれません。
おんぱら祭の名前の由来は、「お祓い」にあります。お祓いが訛って、「おんぱら」となったわけですね。
長い歴史の中で、言葉の転訛はよく見られることです。暑い夏によく飲まれるラムネなども、レモネードが訛って出来たネーミングです。
四方を山に囲まれた奈良盆地は、大暑を迎えると高温多湿の熱帯地獄に陥ります。そんな環境の中では疫病も流行したことでしょう。京都祇園祭も疫病退散に起源を発しますが、夏越しの大祓にも同じような意味が込められます。
おんぱら祭の行事は、セスナ機の祝賀飛行に始まります。
その後、音楽隊の市内パレード、三輪子供会おんぱら音頭踊り、三輪そうめん音頭踊り、日本舞踊奉納等々と続きます。
おんぱら祭で披露される、空手道MAC空手演武奉納。
クライマックスの奉納花火大会へ向けて、様々な催し物が用意されています。
普段は人通りの少ない一の鳥居周辺にも、多数の露店が軒を連ねます。
花火の歴史は江戸時代に遡ります。
第八代徳川吉宗の時代に、享保の飢饉が引き起こされます。
飢饉は畿内が中心だったようですが、江戸ではコレラが流行して多数の死者を出してしまいました。隅田川の花火大会はこれらの慰霊と厄払いを兼ねて始まったと言われます。私たちが普段何気なく楽しんでいる花火にも、お祓いの意味が込められていたのですね。
水無月の 夏越の祓する人は 千歳の命 延ぶといふなり。