安倍文殊院の境内に、アメリカ美術史家・ラングドン・ウォーナー博士の供養塔が建っています。
文殊院名物のコスモス迷路や干支ジャンボ花絵を見るために展望台へ上ると、晴明堂の斜め前にひっそりとその供養塔が佇みます。
安倍文殊院のウォーナー塔。
安倍氏の氏寺だけに、安倍氏を祀る供養塔であれ違和感もないのですが、なぜこの場所にアメリカ人の供養塔が建っているのでしょうか。
ウォーナー伝説に隠された真実
奈良や京都の文化財を戦時中の空爆から救った人物とされるラングドン・ウォーナー博士。
その功績を称えるために安倍文殊院の他にも、法隆寺西円堂の西側や鎌倉駅西口に、それぞれ供養塔や顕彰碑が建てられています。
ウォーナー塔の案内板。
奈良や京都や鎌倉といった、日本の古都の文化財が守られたのはウォーナー博士のお蔭である。そんな感謝の気持ちから、このウォーナー塔は建てられました。
しかしながら、当のご本人のウォーナー博士はそのことを否定しておられました。単に謙虚な気持ちから否定なさっていたのでしょうか。あるいは本当に、博士が古都への攻撃を回避するよう、米軍に働きかけたという伝説は偽りだったのでしょうか。後に作られたストーリーだったのでしょうか。
晴明堂の前に建つ天文観測の地碑からウォーナー塔を望みます。
一連のウォーナー伝説とは、日本人に親米感情を持たせるために作り上げられた「GHQ占領政策」の一環だったのでしょうか。もしそうだとすれば、ウォーナー博士報恩供養塔の意味も薄れてしまうのではないか、そんな危惧が抱かれます。
あるいはそんな事は通り越して、日米間の本当の歴史を知る上でも貴重な記念碑であると言えるのではないでしょうか。
ウォーナー塔の真下では、干支の描かれたジャンボ花絵が参拝客の目を楽しませてくれます。
子丑寅卯・・・と毎年違ったジャンボ花絵を目に焼き付け、今年一年の飛躍をこの場所で誓う人も多いのではないでしょうか。
毎年6月9日には、ウォーナー博士の命日法要が営まれています。
岡倉天心の弟子としても知られるウォーナー博士。東洋美術史に名を残すウォーナー博士が親日家であったことは想像に難くありません。
仲麻呂望郷枝垂れ桜の根元に葉牡丹が植えられていました。
向こうに見えているのは、精巧な切り石で造られた文殊院西古墳です。
ウォーナー伝説の真偽のほどはさて置き、日本の歴史を省みる意味においても、ウォーナー塔はとても重要な位置付けにあるものと思われます。