涼やかな虫の音も聞こえるようになり、秋の気配が感じられるようになりました。
安倍文殊院のコスモスが気になって境内へと足を向けます。安倍の文殊さんに来れば、必ず展望台のある晴明堂に立ち寄ります。そこに祀られている如意宝珠に、羅刹天(らせつてん)という言葉を見つけました。
如意宝珠に記された「羅刹天」。
羅刹天とは何を意味するのでしょうか?
羅刹天は四天王の一角である多聞天(毘沙門天)に夜叉と共に仕える神です。十二天の一つに数えられ、西南を守護する神様として知られます。十二支における未申の方向を守る神様のようです。
安倍晴明生誕の地&安倍寺跡のサルスベリ
安倍文殊院の近くには、飛鳥時代の安倍寺跡があります。
安倍寺跡は阿部一族の本拠地とされ、昭和45年に史跡指定を受けています。取り立てて何も無い史跡公園ですが、金堂跡や回廊跡の一部基壇が復原整備されていました。
陰陽師・安倍晴明を祀る晴明堂。
安倍晴明生誕の地とも伝えられる安倍文殊院ですが、そのことをご宿泊頂いたお客様にお伝えすると、安倍晴明が生まれた場所は京都の晴明神社ではないのですか?というお声が返って参ります。
確かにそうなのかもしれません(笑)生誕の地論争というものは、なかなか解決の糸口が見つかりにくいものです。
安倍文殊院の境内から南西方向にある安倍寺跡。
さるすべりの花も既に見頃を過ぎてしまっているようです。
金閣浮御堂前の拝観受付窓口。
羅刹(らせつ)は古代インド神話における鬼神で、梵名をラクシャス、またはラクシャサと言います。
大力で足が速く、人を食うと言われ、破壊を司る神や鬼の主尊として知られます。なんだか恐ろしい神様のようですね。そんな悪鬼も後に仏教に入り、守護神として崇められるようになりました。
興福寺国宝館に安置される阿修羅像も、その昔は悪神であったと伝えられます。
物憂げなその姿に、改心して帰依した歴史が隠されます。人を食う鬼神から守護神へと、見事に変身を遂げた羅刹天。甲冑を身に付けて刀を持ち、白獅子に乗った羅刹天の姿はどこか安倍文殊院のご本尊・文殊菩薩像にも似ています。
安倍文殊院の如意宝珠。
今年も9月24日に十五夜を迎えますが、真ん丸な如意宝珠を見ていると満月の姿を想像せずにはいられません。羅刹天~未申~月天のつながりは単なる偶然なのでしょうか。