春日大社の表参道を進みます。
馬止橋(まどめのはし)を過ぎると、左手に春日荷茶屋と萬葉植物園の正門が見えて参ります。この辺りで表参道は本殿へ向けて右へカーブしていきます。さらに歩を進めると、参道左側に小さな祠が建っているのに気付きます。
春日大社末社の壺神神社。
醸造の神様を祀っているようです。
春日大社境内には「春日祭」にお供えする御神酒が醸造される酒殿(さかどの)があり、殿内には酒の神様も祀られています。酒殿は桂昌殿(けいしょうでん)の南側に位置していますが、普段参拝客が訪れることはありません。こちらの壺神神社も表参道沿いにあるとはいえ、ほとんどの参拝客が素通りしてしまう神様でもあります。
不思議な石像と八岐大蛇退治の酒壺
壺神神社の祠の下に、ミステリアスな石像が祀られていました。
壺神神社の祠の前で手を合わせるのは初めてだったので、今まで祠の下を確認することはありませんでした。
どうでしょう、このお姿。
猿なのか人間なのか、はたまた素戔嗚尊(スサノオノミコト)が模られているのか?全く見当も付きませんが、その姿勢から察するに猿石のようにも思えてきます。
千木が交差する壺神神社の祠。
そもそも、壺神ってどんな神様なのでしょうか。
一説によれば、素盞嗚尊が八岐大蛇退治で使った酒入りの壺のこととも言われます。
天上界から追放されたスサノオは出雲の国に降り立ったと伝えられます。
今の島根県の斐伊川(ひいがわ)上流から箸が流れてくるのを見たスサノオは、上流で人の暮らしがあることに気付きます。川の上流へ上って行くスサノオ。すると、老夫婦が少女を間に置いて泣いているところに出くわします。聞くところによると、8人の娘が次々に八岐大蛇(ヤマタノオロチ)に食べられてこの子だけになってしまったと言うではありませんか。
春日大社の祓戸社。
ものすごい数の初詣客ですし詰め状態です(笑) 春日大社の参道は上手へ行くほどボトルネックになっており、二之鳥居辺りで一旦立ち入りが制限されていました。
壺神神社の石燈籠。
老夫婦から、その憎らしい大蛇の姿を聞き出したスサノオ。
オロチの目は赤いホオズキのようで、体一つに八つの頭と尾があったと言います。その背には日陰蔓(ひかげかずら)や桧、杉が生え、長さは谷八つに山八つ分もあり、その腹は血まみれでただれている・・・と。見るからに末恐ろしい怪物だったのでしょうね。
娘をスサノオに献上することに決めた老夫婦。
スサノオはその娘を神聖な櫛に変え、角髪(みずら)に刺してヤマタノオロチ退治を宣言します。まずは強い酒を醸造し、垣を巡らせて八カ所の入口を作りました。そして、その八つの入口ごとに舟形の器を置き、醸造した強い酒を入れて待機しました。
この酒を飲み干し、寝ているところを退治されることになったヤマタノオロチ。つまり、古事記に出てくるこの ”舟形の器” こそが壺神様なのでしょうか?真偽のほどは定かではありませんが、「醸造の神様」ということですから、あながち嘘でもないような気が致します。
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