12月17日開催の『春日若宮おん祭お渡り式』に行って来ました。
今年は降雨のため一部省略されましたが、県庁前の出発風景を中心にご案内します。
正午からのお渡りを前に、続々と時代衣装に身を包んだ面々が集まってきます。興福寺五重塔・東金堂前では、大名行列の予行演習を見学することもできました。
出発に備え、スタンバイする渡り神子(わたりみこ)。
初詣などでもお馴染みですが、春日大社の巫女は巫女(みかんこ)と呼ばれています。春日若宮おん祭のお渡り式では、ミカンコとは別に、大社の近隣から神子(みこ)たちが集結します。社家の故地・辰市村から出る辰市神子(たついちのみこ)をはじめ、八嶋神子(やしまのみこ)、郷神子(ごうのみこ)、奈良神子(ならのみこ)などが参勤します。
近隣旅館から姿を表す神子!榊の車も保管
当日の朝、午前10時30分頃に猿沢池周辺に到着しました。
もう既に露店が所狭しと並んでおり、お祭りムードが漂います。興福寺南大門前で行われる「南大門交名の儀」のセットも準備万端でした。外国人観光客の姿もあちこちに見られ、日本のお祭りを祝う華やかな雰囲気に包まれます。
春日大社鳥居前にある旅館から、続々と白布を被った神子たちが姿を現します。
この白い布を「被衣(かづき)」と言うようです。
頭から被せる(かぶせる)ことを「被く(かづく)」と表現しますが、現代でも ”里芋のきぬかつぎ・きぬかずき” と言ったりしますよね。あの「かづき」と意味は同じです。
騎乗する渡り神子。
紙垂傘(しでがさ)を従えて、慎ましやかに県庁前を通過します。
数年前は松の下式で場所取りをして見学しましたが、場所を変えるだけで雰囲気も変わりますね。
お渡り式の見学は「最前列」が鉄則なのかもしれません。
二列目に陣取ると、前列の方がいくら背が低くても撮影の妨げになってしまいます。同じ見学者でありながら、”妨げ”とは大変失礼な言い方になってしまうのですが、あくまでも撮影に重きを置いていらっしゃる方には ”最前列” がおすすめです。通過する場所さえ分かっていれば、先手を打つことも出来るでしょう。しばらくは待ちぼうけの時間を喰らうことになりますが、せいぜい30分やそこらです。
車道にスタンバイする大八車。
五色幕の中には、直立の榊が一本立っていますね。お渡り行列のかなり前方にて先導しますが、榊にはお祓いの役目があるようです。
そう言えば、お渡り式に先立つ「遷幸の儀」でも神聖な榊の枝を以て、十重二十重に神霊(若宮の神様)を囲んでお遷しします。車を引く方にお伺いしたのですが、この榊車も普段は春日大社近くの旅館で保管されているそうです。
さすがは門前の旅館ですね。
おん祭との関係も深いようで、看板には「春日若宮おん祭救護所」と書かれていました。
ずらりと勢揃い。
出発前に記念写真に収まっていらっしゃいました。
観光客やメディアに向けてポーズを取っておられるのですが、時代行列に参加する ”身内同士” でもパシャパシャとシャッターが切られます。伝統行事を皆で楽しむ雰囲気が会場全体を包み込みます。
榊を乗せる車の意匠。
これは連珠剣頭巴紋ですね。
春日大社末社の「総宮神社」で見た紋と同じです。珠が連なる連珠紋、剣の頭を表す剣頭紋、三つの巴が合わさる巴紋がデザインされています。連珠剣頭巴紋には魔除けの意味が込められ、お渡りを導くにはうってつけです。
五色幕に白装束がよく映えます。
向こうに黒い幕が掛かっていますが、有料観覧席において芸能が披露されていたようです。
お渡り式の準備風景も興味を引きますよね。
いざお渡りが始まると、なかなか ”静止状態の被写体” に出会えません。参加者のお顔にも笑顔が見られ、本番とはまた違った雰囲気が楽しめます。色々話しかけてみることもできますので、人との触れ合いも楽しめます。
毎年様々な角度から楽しめる春日若宮おん祭。
アプローチに仕方によっては、これは死ぬまで間に合いそうにありません(笑)