近場の魅力を掘り起こすマイクロツーリズム。
新型コロナウィルスの感染拡大により、移動の自粛が叫ばれる昨今。県をまたぐ移動が付き物の旅行が敬遠される傾向にあります。そんな中、脚光を浴びているのが近場の穴場観光です。
奈良市の頭塔。
かねてより「安近短」という言葉はありました。
安くて近い、短距離移動の旅行先。景気動向にも左右されるレジャー旅行は、様々な流行り廃りがありました。しかしながら、今回のコロナショックは今までの旅行動向とは異なります。
身近な材料を繕いながら、新たな価値を生み出していくブリコラージュ。
コロナ禍を契機に、観光地の再編力が問われるようになりました。
地元奈良を見つめ直す時間旅行
三密を避けるために旅先を分散する。
観光公害が問題の京都市ですが、あれだけ賑わったインバウンドも今はゼロの状況です。外国人から国内旅行客向けに仕様変更が進みます。人気の観光地を楽しむだけが旅行ではありません。今まで見向きもされなかった”場末の穴場”にフォーカスしてみるのも面白そうですね。
桜井市の等彌神社。
神武天皇ゆかりのお社で、伊勢神宮内宮にあった鳥居をお迎えしています。
私もそうでしたが、奈良県民でも奈良のことをよく知らないものです。灯台下暗しはほとんどの人に共通しているでしょう。もちろん、東大寺や奈良公園のことはよく分かります。でも、少し離れた伝香寺や頭塔へは足を向けたことがなかったのです。
改めて思います。
今一度、奈良を見直してみよう。これだけの歴史を持ち、これだけの国宝を有する奈良県を・・・ ” 改める(あらためる)” という言葉は、” 新た(あらた)” に通じています。今再びの奈良でありながら、全く新しい何かを見つけるチャンスです。
安倍文殊院白山堂の縁結び絵馬。
奈良はどこよりも歴史が深い。
遠くへ行くだけが旅行ではありません。確かにヨーロッパ諸国やハワイへ行けば、それだけで旅行した気分が盛り上がります。近場の旅行で気分が盛り上がるのか?やはりそこは、気持ちの持ちようでしょう。近場の旅行は、移動する「空間の距離」がかせげません。でもその分、奈良には悠久の歴史があり「時間の距離」がかせげます。
ゆったりと流れる時間に浸る。
”縦軸の時間”に自分を置いたとき、すっぽりとハマるのが奈良県ではないでしょうか。
気付かずに通り過ぎていた神社。
名前は聞いていたけれど、今まで足を踏み入れることのなかったお寺。
メインストリートから一歩路地に入れば、未知の世界が広がっています。生活の匂い、地域住民に守られた祠、曲がりくねった道の先に辿り着くいつもの道。あっ、こんな所でつながっていたんだ!と思うだけでも新たな発見です。
「神は細部に宿る」と言います。
旅行の醍醐味もミクロな視点に立脚しているのかもしれません。マイクロツーリズムの先には、きっとマクロな旅があるはずです。