桜井市にある聖林寺の御本尊は子安延命地蔵です。
天平彫刻の傑作である十一面観音があまりにも有名で、その陰に隠れがちですね。江戸時代中期の地蔵石仏で、その高さは3.5mにも及びます。昔から子宝にご利益のある地蔵菩薩として人気を博しています。
聖林寺山門下に咲く花。
昨今は外国人観光客の姿も見られるようになった桜井市内。
大神神社や長谷寺が人気ですが、小ぢんまりした聖林寺なども喜ばれているのではないでしょうか。よく言われることですが、子どもは天からの授かり物です。そのことを改めて気付かせてくれる聖林寺の英語案内に出会いました。
pray for impregnation
妊娠や懐妊を表す英語は、pregnant がよく知られています。
形容詞として使われる単語で、現に私も受験英語で学んだ記憶があります。
聖林寺の案内板に目を通していると、impregnation という単語に出会いました。その意味するところは、「受胎・受精」です。どうやらこの名詞は他動詞から派生しているようで、「~を妊娠させる」という意味のimpregnate から来ています。She is impregnated.で、彼女は妊娠している、と表現します。
子安延命地蔵の絵馬。
案の定というか、妊娠は自動詞ではないのです。
あくまでも受け身の行為であることをうかがわせます。「天地人」の全てが揃った時に、初めて新たな生命を授かるのではないでしょうか。天の時、地の利、人の和。やはり神仏によって授けられる有難いものなのかもしれません。
聖林寺の英語案内。
pray for impregnation と記されています。
受胎を祈願するという意味ですね。ここで気付きましたが、漢字表記でも受け身であることが表されています。このことは同時に、願っても願ってもその願いが叶わなかった人たちもいたことを示しています。
努力などという生易しいものでは解決できない何かがそこにはあります。
聖林寺山門。
聖林寺の子安延命地蔵は、そんな人たちの切なる願いも引き受けてきたことでしょう。
十一面観音の写真。
かつては、今の大神神社若宮社に祀られていたという国宝の仏像です。
聖林寺の石垣。
高台にある聖林寺ですが、この石垣も目を引きますね。
こういう積み方を野面積みと言うのでしょう。自然石と思われる大小様々な石が巧みに積み上げられています。石垣の上の建物は、確か休憩所になっていたと思います。まだ一度も中に入ったことがないのですが、いつかあそこの窓から下界を見下ろしてみたいですね。