多武峰街道の途中にある聖林寺をご案内します(2012年度の過去記事)。
ミロのヴィーナスとも比較される、国宝の十一面観音菩薩が安置されるお寺として知られます。
国宝・十一面観音菩薩立像の絵馬。
本堂から観音堂へ上がって行く所に掲げられていました。
三輪山遠望の聖林寺!地蔵十福の御朱印
聖林寺の十一面観音は元々、大神神社の神宮寺であった大御輪寺に収められていた仏像です。
おだまき杉で知られる若宮さんですね。神仏分離により、慶応4年(1868年)に聖林寺へ移され、フェノロサや岡倉天心によって開扉された歴史を持ちます。
聖林寺の南天。
冬の境内には、南天、千両、万両が所狭しと赤い実を付けています。
本堂の軒先に座布団が並べられています。
ここに座って眺めるのは、眼下に広がる三輪山、山の辺の道、箸墓古墳などの古墳群です。
中央奥の方に見えているのが、神奈備の三輪山ですね。
この写真では隠れていますが、左手には卑弥呼の墓ではないかと言われる箸墓古墳を見下ろすこともできます。大和盆地の人気ビュースポットは幾つかありますが、ここ聖林寺からの眺めも格別です。
聖林寺山門。
ここにも南天の実が赤く色付きます。
門前の右手に「大界外相」の文字が刻まれていますね。
大界外相とは、俗界と聖界を分けるボーダーラインを意味します。
江戸時代の梵学研究者・慈雲(じうん)による「大界外相」の石碑が、今も多くの参拝客を出迎えます。
本堂前の万両。
南天、千両、万両の違いや見分け方をよく聞かれますが、葉っぱを見れば南天の違いだけははっきり分かります。葉にぎざぎざがなく、すっきりスマートな形をしているのが南天です。
千両や万両の葉には、ぎざぎざの縁取りがあります。
聖林寺の千両。
では、千両と万両の違いは何なのか?
千両は見ての通り、葉っぱの上の方に実が付きます。一方の万両は、葉っぱの下にぶら下がる形で実が付きます。個体にもよるかもしれませんが、比較的千両の葉っぱは万両よりも大きく、淡い色をしています。万両の葉は濃い緑色で、縁の部分が少し丸まっているのも特徴の一つです。
観音堂へ続く階段。
これは南天の実ですね。
十一面観音菩薩へ続く階段には、香り高い蝋梅の花が活けられていました。
周囲に芳香が漂います。
聖林寺のご本尊・十一面観音菩薩立像。
第1回国宝指定を受けた24ある文化財の内の一つです。誰もが認める天平彫刻の傑作として、広く世間に知れ渡る仏像です。
観音堂へ続く階段から本堂を見下ろします。
階段を登りながら、観音様との出会いに胸が高鳴ります。
本堂から観音堂へ向かうには、こちらのスリッパを履くことになります。
階段を登ると、右手にご本尊が安置される観音堂が姿を現します。
この中に国宝の十一面観音菩薩立像が収められています。2.2mにも及ぶ長身の仏像で、腕から足に伝って描かれる天衣の柔らかな曲線美が印象に残ります。
子安延命地蔵の絵馬。
聖林寺には高さ3.5mもある子安延命地蔵が本堂内に安置されています。安産祈願、子授け祈願に訪れる参拝客が後を絶ちません。江戸時代中期に造られた比較的新しい石造仏ですが、見る者を安心させるどっしりとしたお地蔵さんです。
境内には少し雪が残っていました。
小高い場所にあるからでしょうか、平地に比べれば気温も低いのでしょうね。
本堂前に、ずらりと子安延命地蔵の絵馬が掲げられていました。
子宝に恵まれたい、無事に出産ができますように・・・時代を超えて母親の切なる願いが聞こえてきそうです。
聖林寺の鐘楼。
南天の赤い実が鐘楼を彩ります。
南天は千両・万両に比べると、実の数がやはり多いですね。
聖林寺駐車場脇の地蔵石仏。
お地蔵さんに掛けられた赤い布も、神社の狛犬に見られる赤いよだれかけと同じ意味合いを持つのでしょう。
地蔵十福の御朱印ですね。国宝の十一面観音様にばかり目が行きがちですが、聖林寺がお地蔵さんのお寺であることの証しです。
石垣の上にせり出すような格好で、休憩処のようなスペースが設けられています。
ここからも眼下の景色を楽しむことができるのではないでしょうか。
聖林寺の創建は、談山神社と深く関わっています。
奈良時代の712年、談山妙楽寺(現在の談山神社)の別院として創建されているのです。藤原鎌足の長子である藤原定慧が建立しました。聖林寺と談山神社を一つのセットとして、歴史的に捉えてみるのもいいでしょう。
聖林寺の拝観料は400円。
当館大正楼から聖林寺へのアクセスは、お車で10分ほどです。公共交通機関をご利用の場合は、近鉄・JR桜井駅より奈良交通バス談山神社行き「聖林寺」下車すぐとなっています。