聖武天皇が堂塔を造営した般若寺。
天平時代に今の姿に近づいた般若寺ですが、その歴史は飛鳥時代に遡ります。朝鮮高句麗の僧・慧灌(えかん)がこの地に一宇を建てたのが始まりとされます。長い歴史を誇る般若寺ですが、本堂前には江戸時代の石造物が二つ置かれていました。
水掛け地蔵尊と手水石船。
名前から察するに、実際に水を掛けて祈願されていたのでしょう。
大阪法善寺横丁の水掛不動尊はあまりにも有名ですが、こちらの水掛地蔵は無名です。もちろん、ご利益の有無は祈る側の心が反映されます。人知れず立ち続けるお地蔵さんにも手を合わせておきましょう。
先祖供養の地蔵尊と文殊堂に寄進された手水石
頑丈そうな手水石も見所の一つです。
花崗岩でできた手水石で、昔は実際に使われていたものと思われます。長方形に刳り抜かれており、失礼ながらお風呂としても利用できそうな気がしてきました。
岩船寺の石風呂などは、実際に僧が体を清めた場所として知られます。手水処も身を清めるためのものですから、大きな隔たりは無いのかもしれません。
キバナコスモスでしょうか。
コスモスが乱舞する境内は、多くの観光客で賑わっていました。
手水石船の縁には何カ所も窪みが見られます。
ここに柄杓でも引っ掛けていたのでしょうか。
あるいは運搬の際の加工跡か?
水かけ地蔵尊と手水石船(江戸時代)
「地蔵尊」 砂岩製
十数年前、東の山中から発見された。銘によると奈良町の北袋町住人の綿屋某が宝暦4年(1754)先祖供養のために造立した。
「手水石船」 花崗岩製
寛文7年(1667)に再興された現本堂(文殊堂)に寄進された。
(刻銘)奉寄進般若寺 文殊堂御賓前 延賓 年八月吉日敬白~
般若寺の絵馬。
知恵の文殊さんということで、合格祈願に訪れる受験生も多いのでしょう。
受験シーズン真っ只中の12月から2月にかけて、般若寺の境内には水仙が開花します。水仙や文殊菩薩に志望校合格を祈願してみてはいかがでしょうか。
おみくじ結び処と十三重石宝塔。
これだけ大きな十三重石塔は他に類を見ません。
五色幕が張られる本堂。
外陣に展示されているのは、かつての文殊菩薩騎獅像が踏み台にしていた蓮華石です。十三重石塔が巨大なら、文殊様も巨大だったのです。般若寺の主役はあくまでも、文殊菩薩やコスモス、それに十三重石宝塔です。そんなメインの脇でひっそりと佇みます・・・。
本堂前にありながら、見落とされがちな二つの石造物。
般若寺の歴史から見れば、比較的新しい江戸時代の遺品です。
ちょっと話は逸れますが、水掛け地蔵の他に油掛け地蔵もいることをご存知でしょうか。苔生す水掛け地蔵に対し、油掛け地蔵は油でギトギトになります(笑) 数か月前にお参りした奈良市古市町の油掛地蔵などは、まさしくその典型です。お地蔵さんの願掛け方法にも色々あるものですね。