つつじの後に杜若が咲き、新緑の美しい景色に包まれる長岳寺境内。
日本最古の鐘楼門をくぐり抜けて境内に入ると、目の前には放生池が広がります。杜若の遠景を楽しんだ後、ふと池の畔の楓(カエデ)の葉っぱに目をやると、プロペラ型の楓の種が見られました。
カエデの種。
新緑のグリーンに赤い種がよく映えます。
阿弥陀三尊の並びとリンクする楓の穂
山の辺の道沿いの長岳寺は、関西花の寺二十五霊場に名を連ねています。
仏像拝観も目的の一つですが、自然豊かな境内を散策するのもおすすめです。
中心に種が付いて、まるでヘリコプターの羽のように両方向に広がっています。
中心の黄色からグラデーションがかかり、美しい赤い羽根を広げた格好に愛らしさを感じます。風で飛び立つ前の楓の種は、新しい生命の可能性に満ちています。風に乗って飛ばされやすいようにこのような形状をしているのでしょう。自然の成せる業を感じさせますね。
楓の種と長岳寺本堂。
地蔵石仏を左に見た後、弘法大師が祀られる大師堂へと続く石段を登ります。その途中で振り返ると、楓の種と長岳寺本堂の風景を切り取ることができました。
境内に咲くつつじと鐘楼門。
5月15日に訪れた長岳寺。今年のつつじはもう咲き終わり、ちょうど杜若が見頃を迎えるタイミングでした。咲き終わりのつつじだけに、境内を隈なく探してまだ咲いているツツジを写真に収めます。
楓の種と長岳寺拝堂。
石段を登った所に佇む大師堂の周りにも、たくさんの楓の種が確認できます。秋には見事な紅葉が楽しめるんだろうなと想像します。此処は本堂や放生池からも一段高い場所にあります。風に飛ばされた楓の種の着地する先は、ひょっとすると本堂の前辺りなのでしょうか。
本堂内に安置される阿弥陀三尊像。
中尊に阿弥陀如来像、左に知恵の分身である勢至菩薩像、右に慈悲の分身である観世音菩薩像が坐します。玉眼を使用した仏像としては日本最古と伝えられます。
拝堂の前に佇む百度石。
お百度参りの石だと思われますが、石の周りをぐるっと回り切れないぐらいに木が生い茂っていたのが気に掛かります(笑)
ご本尊の阿弥陀三尊像を拝観させて頂くと、なぜか頭の中で楓の種がダブります。中尊の阿弥陀如来が種で、両脇侍の観世音菩薩と勢至菩薩がプロペラの羽に見えてしまうのです。誠に不躾な話ではありますが、種の繁殖を助ける楓の羽根が、阿弥陀如来を守る両菩薩像を想像させます。
誰かに助けられて存在する私たち。
一人では決して生きていけない人間界を象徴するようでもあります。
長岳寺鐘堂の鐘。
大きな大師像の前にあります。参拝客が時折、大きな鐘の音を鳴らしておられました。
こちらは紫陽花ですね。
開花前の紫陽花ではありますが、実に美しい緑色を解き放っていました。
長岳寺のパンフレットにも、四季の花だよりとして春の桜、つつじ、かきつばた、夏の紫陽花、酔芙蓉が案内されています。境内の楓の種からも秋の紅葉は言うに及ばず、冬のやぶつばきも見所の一つのようです。
参拝順路の最後の方で、放生池の畔を歩きながら日本最古の鐘楼門を仰ぎます。
新緑の季節に長岳寺を訪れたなら、ドラえもんのタケコプターを思わせる楓の種を見つけてみましょう。三位一体の自然の法則をどこかで感じさせる贈り物です。