安倍文殊院の文殊池に浮かぶ金閣浮御堂(2013年9月)。
池の周りにはコスモスの花も咲き始め、秋の行楽シーズンへ向けて秒読み段階に入って参りました。とある休日の昼下がりにふらっと訪れた境内で、子供の頃の記憶が蘇るショウリョウバッタに出会いました。
安倍仲麻呂の歌碑の手前にある木の杭に注目してみて下さい。
ショウリョウバッタが天を向いて止まっているのが見えます。
ショウリョウバッタは漢字で、精霊飛蝗(しょうりょうばった)と書きます。
ショウリョウバッタの名前の由来!精霊流しの精霊船
ショウリョウバッタという名前は、夏の精霊流しでおなじみの精霊(しょうりょう)に由来しています。
精霊流しとは、旧盆の13日に迎えた精霊(死者の霊魂)を、15日の夕方あるいは16日の朝早くに川や海に流す行事のことを言います。仏事にまつわるショウリョウバッタの姿が、安倍文殊院の境内にもよく映えますね。
横向きになってみるとよく分かりますが、やはりどこか船の格好にも似ています。
精霊祭の頃になると姿を見せるショウリョウバッタですが、精霊流しの精霊船を思わせることからも命名されたのでしょう。
私の子供時代には、ショウリョウバッタは蟷螂(かまきり)と共に昆虫採集の標的でした。
草むらの中をかき分けてよくショウリョウバッタを探したものです。死者の魂を運んでくれるショウリョウバッタ・・・昔の人はそんなイメージを抱いていたのかもしれないと思うと、なんだか罰当たりなことです(;^_^A
晴明堂の前の展望台からコスモス迷路を俯瞰します。
金閣浮御堂の下に広がるコスモス迷路。今年も数多くの観光客で賑わいを見せることでしょう。
コスモス迷路自体は何度も体験したことがあるのですが、展望台まで上がって見降ろすとまた新鮮な味わいがあります。ジャンボ花絵のシーズンには必ず展望台からの眺めを楽しむわけですが、コスモス迷路の時も上から道に迷っている人を眺めてみるのも一興ですね(笑)
コスモスが風に揺らぎます。
それとは対照的に、ショウリョウバッタはしっかりと杭にしがみ付いています。
しだれ桜の周りにもコスモスが開花しています。
今春訪れた際に、強い印象を残した仲麻呂望郷しだれ桜。春には桜、秋になるとコスモス、安倍文殊院は長谷寺にも負けないぐらいの「花のみてら」ではないでしょうか。
朱色の門前に建つ下馬の石標。
ここから先は馬から下り、歩いて参拝をする慣わしでした。
ショウリョウバッタの名前の由来には諸説あって、霄壤(しょうじょう)という言葉から来ているという説も伝わります。
天と地ほどの大きな隔たりを意味する天地霄壤の差という言葉があります。ショウリョウバッタのオスがメスに比べてかなり小さいサイズであることから、ショウジョウバッタと呼ばれることもあるとか。
目の前のショウリョウバッタは割と小さめだったので、おそらくオスではないかと思われます。なるほど、天地霄壤の差がネーミングの由来になっているのかもしれませんね。
これから秋にかけて、原っぱで誰もが目にするショウリョウバッタ。
ひょんなことからショウリョウバッタに関する知識が増えた一日でした。