古代神話の世界にも登場する鱶(ふか)。
因幡の白ウサギの神話では、「鰐(わに)」という名前で出ていますが、要するにフカやワニは鮫(サメ)のことを意味しています。
新鮮なフカが入荷しました。
数億年前からずっと、その姿形を変えずに現代まで生き延びている究極の進化形として知られます。古代人たちもきっと、鮫の姿に恐れおののいていたのではないでしょうか。
『古事記』に記載!因幡の白兎にダマされた鮫
フカを見ていると、有名な古事記の件(くだり)を思い出します。
隠岐の島に居た白ウサギが、向こう岸の気多の岬に渡るためにサメを騙したというお話。
フカを三枚おろしに捌きます。
内臓を取り出された後も、その目つきは鋭いままです。
白ウサギはサメに話しかけます。
「兎と鰐(わに)を比べて、どちらの種族の数が多いか数えてあげるから、御前の一族を皆んな呼んできて隠岐の島から気多(けた)の岬までずらっと並んでみてよ。そしたら僕が、その背中の上をぴょんぴょん飛びながら数えてあげるよ」。
「古代いしにへプラン」の予約が入っていたので、お造りの皿にフカの刺身を盛ってみました。人参のわさび台の向こう側に見える、美味しそうな白身がフカです。
サメ独特のアンモニア臭は若干気になるものの、それを上回るあっさりとした上品なお味です。
海の上に並んだ鰐(わに)の上を一つ、二つと数えながら海を渡り切った白ウサギ。
最後に岸へ飛び移る時、「や~い、お前たちは僕に騙されたんだよ」。と、打ち明けます。騙されたと知った鰐(わに)が白ウサギを捕まえて、皮を剥いでしまったというお話です。
この後、白ウサギが大国主神に助けられる件へと続いていきます。
フカと胡瓜の酢の物。
冷蔵庫にあったひじきも一緒に和えています。フカの皮も軟骨も全てを使って仕上げています。
大国主命と白ウサギとの出会いには、サメの存在が一役買っていたというわけですね。ご存知のように大神神社の御祭神は大国主命です。大神神社参集殿の玄関口にはなでうさぎが座っています。
古代神話の世界において度々登場するサメには、何か不思議な存在感を感じます。
こうやって見ると小型のフカとはいえ、やはり恐ろしいサメの姿が重なります。
滅多に入荷しないフカではありますが、神話世界との親和性を考えれば、古代料理の食材としておもてなしするのも面白いのではないでしょうか
フカの刺身。
実に綺麗な白身です。あっさりとしたその味わいはクセになりそうです。
昨日、BSで放映されていた ”深海魚ギンザメ” の特番を見ました。
まだその生態が明らかになっていない深海のフカですが、大変興味深い内容でした。交尾の際、ギンザメのオスは頭上の突起物をメスの胸鰭に引っ掛けて泳ぎます。メスにぴったりとくっ付いて交尾を試みるのです。ミステリアスなギンザメの外見も手伝い、神秘の世界に引きずり込まれました。
古代から生きていたサメ。
環境の変化に対応しながら生き延びてきた生物には、ある種の畏敬の念を抱きます。