朱色の斑点が鮮やかなアコウ(キジハタ)。
関西地方では「夏のフグ」とも呼ばれる魚です。珍しくアコウが入荷したため、秋らしく竜田揚げにしてみることに致しました(2013年10月)。
キジハタの竜田揚げ。
南瓜の素揚げを手前に盛り、柑橘系のへべすを添えます。
竜田揚げの由来!重なるアコウの模様
醤油と酒で洗ったアコウの身を、たっぷり目の片栗粉でコーティングして170度の油で揚げます。高級魚のアコウとあって、その味は絶品です。
スズキ目ハタ科に属する魚のアコウ。
その口に注目してみると、下顎の出た受け口であることが分かります(笑)
全身に朱色の斑点が見られます。
キジハタ(雉子羽太)という別名は、鳥の雉(きじ)のような文様を持つことに由来します。アコウはハタの仲間ですから、雉のような模様を持つハタという意味で名付けられたのでしょう。
”夏のアコウの薄造り” で知られる魚です。さすがに今の時期は旬を過ぎているためか、さほど新鮮でもなかったため「竜田揚げ」という手法で調理してみることに致しました。
揚がった色合いが紅葉を思わせることから、紅葉の名所である龍田川にちなんで竜田揚げと申します。龍田川は奈良県内を流れる川ですね。
奈良県北西部の生駒川が南下して、大和川に合流するまでの約16㎞の小さな流れを龍田川と言います。
法隆寺の守護神である龍田神社を思い出します。昔から紅葉と流水をモチーフにした絵柄を龍田川文様と言い、椀や陶磁器などに描かれる模様として人気がありました。
アコウの体の表面も、なぜか紅葉を思わせますよね。
漢字で書くと、赤魚(あこう)となります。背中の中央に黒っぽい大きな斑点が一つ見られるのが特徴です。浅い岩礁エリアに生息する魚で、比較的波の荒い浅場を好みます。
ちはやぶる 神代も聞かず 龍田川 からくれないに 水くくるとは
在原業平の有名な短歌にも謳われる龍田川。
龍田川の情景に重なる赤い色合いが、なぜかアコウの体表の模様にも重なります。
こちらはアコウのあら炊き。
あらからも実に美味しい出汁が出ています。
アコウは「雌性先熟」の性転換が見られる魚としても知られます。自然環境の中では、全長約40㎝になると雌から雄へ性転換します。面白い生態をしていますよね。
尾びれの端が丸い形状をしているのもアコウの特徴の一つです。
本州南部以南で獲れるアコウは、北日本の方々には珍しく映るのではないでしょうか。限られた海の資源を大切にしながら、その味を堪能していきたいものですよね。