長谷寺本坊へと続く道。
道の両脇には色とりどりの牡丹が花を咲かせ、参拝客の目を楽しませています。そこから向かって右手の石垣の上に目をやると、何やら赤い花が咲いていることに気付きます。
長谷寺に開花する紅花常盤満作(ベニバナトキワマンサク)。
あまり聞き慣れない名前ですが、どうやら中国原産の花のようです。満作の花と言えば、高松塚古墳で見た黄色い満作を思い出します。長谷寺に咲く紅花常盤満作も、あの黄色い満作と同じ種類に属するのでしょうか。
革紐を連想させる花弁を持つベニバナトキワマンサク
中国原産の紅花常盤満作は、マンサク目マンサク科トキワマンサク属に分類されます。
トキワマンサクの変種の紅花品種とされる花です。学名を Loropetalum chinese (ロロペタルム チャイニーズ)と言います。トキワマンサクを表すロロペタルムチャイニーズですが、Loron(ロロン)が革紐、petalon(ペタロン)が花弁を意味しています。細長い花弁が特徴的で、まるで革紐のような形状に目を奪われます。
高松塚古墳で満作を見たのは早春の時期でした。今回、長谷寺を訪れたのは牡丹の咲くゴールデンウイーク前です。早春に「まず咲く」ことから、満作(まんさく)と命名されていることを思うと、こちらのベニバナトキワマンサクは少し事情が違うようですね。
一口にマンサクと言っても、様々な種類があって開花時期にも色々あるようです。ちなみに常盤満作の「常盤(ときわ)」は常緑を意味しています。ベニバナトキワマンサクの花言葉は呪文、霊感、魔力とされます。
本坊の正面廊下奥に見られる猩々野村ですが、紅花常盤満作の奥の方にも植えられているのでしょうか。
石垣の上という立地上の問題から、残念ながら近づくことができませんでした。紅花常盤満作も至近距離から撮影したかったのですが、残念ながら立ち入り禁止区画になっていました。
長谷寺仁王門前に、御本尊十一面観音の御足に触れる特別拝観の看板が立っていました。その右に、室生寺行きの直通臨時バスの案内が出ています。奈良交通運行のバスで、長谷寺門前から室生寺前までを直通で結びます。所要時間は50分で、大人運賃830円・小人運賃420円となっています。
仁王門前の拝観受付横に、本堂(観音堂)への送迎車案内が出ていました。
長谷寺本堂へは緩やかな登廊とはいえ、399段もの階段を登って行かなければなりません。そのためでしょうか、つづら折りの東参道を通る送迎車がここから出ているようです。
奥の院の陀羅尼堂へと続く石段から紅花常盤満作を撮影します。
ここからだと、背景に本坊を捉えることができます。
牡丹を愛でる参拝客の姿が見えます。
牡丹の他にも、本坊門前には緑色の桜で知られる御衣黄桜が咲いていました。
こちらは、普門院不動堂の藤の花。
参拝者の休憩所として知られる長谷寺門前の秋葉権現にお参りし、仁王門へと歩を進めます。参拝入山受付所の手前右側に、木造不動明王坐像を安置する普門院不動堂が姿を現します。こちらのお不動さんは、三輪山の平等寺に祀られていた仏像として知られます。
仁王門の前に「団参」の文字が見えます。
全国各地から、ここ長谷寺まで団体参拝にいらっしゃっているようですね。
それにしても見事な咲きっぷりです。
生垣にもぴったりの花ではないでしょうか。
長谷寺の十一面観音は錫杖を手にしています。
山に分け入った時に、錫杖の鳴る音が獣や毒蛇を遠ざけると言われます。衆生を救うために、どこへでも足を向けて下さる観音様。少し険しい場所に咲くベニバナトキワマンサクを見ていると、なぜか長谷観音のお慈悲が感じられるのは私だけでしょうか。
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