奈良の長谷寺の寺紋として知られる輪違い紋。
輪違い紋とは、二つあるいはそれ以上の輪を交差、あるいは組み合わせたりした紋のことを言います。中央に花の紋をあしらった「花輪違い紋」もありますが、長谷寺の寺紋は単純に二つの輪を組み合わせた輪違いです。
輪違い紋の向こうに見える399段の登廊。
日本国を象徴する五七桐の両サイドに輪違い紋がデザインされています。
輪違い紋を探せ!境内の香炉台、賽銭箱、屋根瓦
長谷寺を象徴する輪違い紋。
東京ディズニーランドなどでも、”隠れミッキー探し” はいい暇つぶしになります(笑)
ひとつのシンボルマークを見つけたら、それを探し回るのも面白いものです。長谷寺の輪違い紋は決して隠れているわけではありませんが、牡丹や紫陽花、紅葉の陰に隠れた存在でもあります。
本堂前の香炉台にも輪違い紋がありました。
邪鬼が一生懸命に支えています。
輪違い紋は、平安時代に人気の文様の一つであったと言われています。
南北朝時代になると、高階氏が家紋として輪違い紋を使用していました。高階氏は、天武天皇の孫に当たる長屋王のつながりで、藤原氏と姻戚関係になることで栄えました。同じく藤原氏の流れをくむ大名の脇坂氏も、この輪違い紋を家紋としています。
尾上の鐘(鐘楼)に吊るされた燈籠にも、輪違いの紋が描かれています。
長谷寺のご本尊・十一面観世音菩薩立像の向かって右側に、重要文化財の難陀龍王立像が安置されています。頭に龍を載せた仏像ですが、藤原氏の氏神である春日の神様を祀っているそうです。輪違い紋と藤原氏、それに長谷寺のつながりが見えてくるような気がします。
長谷寺の紅葉は、この構図が一番人気ではないでしょうか。
よし今だ! とシャッターを切ろうとすると、向こうの回廊の角を曲がって来られる参拝客に悩まされます(笑) 数多くのカメラ愛好家の皆さんが、この場所でタイミングを図っておられました。
長谷寺本堂(大悲閣)の賽銭箱にも、輪違いのマークが見られます。
清水の舞台を思わせる、ここ長谷寺の本堂は国宝に指定されている建物です。
長谷寺本堂に連なる舞台。
崖の上に建てられており、眼下に広がる紅葉はまさしく絶景です。
長谷寺の寺紋である輪違いは何を意味しているのでしょうか?
天地は金剛界、胎蔵界の二界に分かれている。
生物は金剛界・胎蔵界の二界を右往左往して生きていると言われます。曼荼羅などでも知られる世界観ですが、金剛界は智の世界を表し、胎蔵界は理の世界を表現します。
開山堂から本堂へ続く石段。
衆生はそのいずれにも付かず離れず、泣いたり笑ったり怒ったり恨んだりしているとされます。これを大乗遊戯相と言います。浮遊しているのですね、私たちは。
しかしながら、仏はこの衆生をすべて救います。それが仏の慈悲なんだそうです。輪違い紋の二つの輪が互いに組み合っているのは、不悟の衆生としっかり結んで、天地の調和の中に組み込むためであると伝えられます。
山茶花でしょうか。
冬を代表する花であるサザンカの花。登廊とのコントラストも見事に映えます。
長谷寺登廊の瓦にも、輪違い紋が見えます。
輪違い紋を眺めていると、どこか最大公約数のマークにも見えて参ります。
お互いの共通項とでも言いますか、集約されて密になったコアな部分・・・そこには仏様の真理が隠されているような気がしてなりません。