今年もこの季節がやって参りました。
色鮮やかなパンジーで作られる安倍文殊院の干支を模ったジャンボ花絵。来たる2015年度は未年を迎えます。文殊池と金閣浮御堂を背景に、モフモフの毛に覆われた巨大な羊の花絵が登場しています。
安倍文殊院のジャンボ花絵・羊バージョンが姿を現しています。
来年のカレンダーを見れば分かりますが、そこには「乙羊(きのとひつじ)」と記されています。果たしてどんな一年になるのか、今から気になるところですが、ここで干支における乙羊を占ってみましょう。
乙羊の意味
一時期流行した動物占いや十二支の物語で、羊のイメージは大体の人が共有しているものと思われます。そこで、十干の第二に位置している乙(きのと)について考えてみたいと思います。
花壇に植えられたパンジーと、背景に浮かぶ金閣浮御堂。
よく私たちは「甲乙つけがたい」と表現しますが、その「乙」に当たるのが「乙(きのと)」であることを再確認しておきたいと思います。
乙(きのと)は「木の弟(と)」を意味し、甲(きのえ)の「木の兄(きのえ)」に対比されます。兄に対して弟の位置付けにあるのが乙(きのと)というわけですね。弟・乙(おと)は「落とす」や「劣る」の「オト」と同じルーツを有しています。上下で言うなら、下を意味するのが乙です。しかしながら、そこには「末・次・幼い」などのニュアンスも含まれ、愛らしい・美しいなどの意味も併せ持ちます。
また乙はL字の原型であるとも言われ、あるところまで伸びていって屈折する形を表しています。
植物が抑圧されて伸び出せず、地中で屈曲している状態を表すのが「乙」であるとされます。「未」という漢字は、「未だ」という言葉があることからも分かりますが、木がまだ伸びきらない部分を描いた象形文字です。
来年は”待ちの状態”に入るのでしょうか。なぜかそんなことを予感させる秘密が、乙羊という言葉には隠されているような気が致します。
弘法大師像と落ち葉。
弘法大師像の前には石仏が並び、観音霊場巡りのご利益に授かります。
人生いい時もあれば悪い時もあります。人間万事塞翁が馬を肝に銘じ、乙羊の一年を過ごしてみるのもいいのではないでしょうか。桜の開花は、冬の寒さが厳しいほど見事だと言います。雄飛の前には必ずと言っていいほど雌伏の時があります。深く屈まなければ、高くは飛び上れないのです。
愛の願いと書かれた白山堂絵馬と閼伽井古墳。
朱色の合格門の左手に、縁結びの神様を祀る白山堂が佇みます。さらにその奥手には古墳と、バリエーションに富んだ安倍文殊院の境内を歩きます。
9,500株のパンジーで干支の未が描かれます。
縦20メートル、横25メートルにも及ぶ巨大な花絵の完成です。花絵の横に建つ不動堂脇からは、こんなに見事な未が描かれているとは思いもよりません。甲子園球場の応援などでお馴染みの人文字の原理と同じですね。離れた高所から望むと、その全貌が明らかになります。辰年のジャンボ花絵、巳年のジャンボ花絵、午年のジャンボ花絵と、毎年のようにこの場所を訪れて撮影を繰り返して参りましたが、一年間の出来事を振り返りながら物思ういい機会になっています。
金閣浮御堂前の紅葉。
安倍文殊院の巨大花絵ですが、来春まで楽しめるというのがいいですね。
葉牡丹で作られた「合格」の二文字が、受験生たちの頑張りを後押ししてくれるような気が致します。新年の挨拶用に、パンジー未を撮影に来られる参拝客も多いでしょう。ふかふかの毛に覆われた未のように、心温まる一年が過ごせますようにお祈り申し上げます。