多武峯街道のモデルコースとして聖林寺は外せません。
和辻哲郎が「古寺巡礼」の中で絶賛した、国宝の十一面観音立像が安置されるお寺です。
聖林寺の石仏。
JR桜井駅から多武峯街道を南へ2km弱進んで行くと、談山神社一の鳥居が見えてきます。鳥居を左手に見ながら、さらに300mほど進んだ所に聖林寺があります。
鎌足の長男が創建した聖林寺!慈雲の大界外相
つい先日、桜井市高田の集落から山道を抜け徳利塚古墳を見学しました。
改めて地図で見直してみると、徳利塚古墳と聖林寺は距離的にそう離れていないことに気付きます。
山門の下に万葉集の石碑がありました。
椋橋(くらはし)の 山を高みか 夜ごもりに 出で来る月の 光ともしき
歌の意味はこんな感じです。
倉橋の山が高いからだろうか、夜もふけてから、やっと姿を出してくる月の光はなんと弱くとぼしいことよ。聖林寺から程近い場所に倉橋溜池があります。現在の地名は倉橋ですが、昔は”椋橋”と書いたようですね。
聖林寺へと続く多武峯街道沿いに建つ造り酒屋。
酒林と呼ばれる杉の玉が軒先にぶら下がっていますね。
聖林寺の住所は、桜井市大字下692。
談山神社は藤原鎌足を祀っていますが、聖林寺を創建したのは鎌足の長男に当たる定慧(じょうえ)です。712年(和銅5)の創建と言いますから、平城遷都後すぐだったんですね。
聖林寺の本堂。
聖林寺といえば、冬の千両で有名です。
訪れたのは2月の春先だったためか、もう既に名物の千両は見ることができませんでした。冬の聖林寺は千両、万両、南天などの赤い実が境内を埋め尽くします。
聖林寺の山門。
江戸時代の梵学研究者・慈雲(じうん)による「大界外相」の石碑が残されています。大界外相は聖域とのボーダーラインを示します。
聖林寺は天平彫刻の傑作である十一面観音立像はもとより、高さ3.5mを誇る子安延命地蔵をお目当てに訪れる安産祈願のお寺としても知られています。
聖林寺へのアクセスは、JR・近鉄桜井駅よりバス談山神社行き聖林寺前下車徒歩3分となっています。バスで行くのもいいですが、風情あふれる多武峯街道をぶらぶら歩きながら参拝するのがおすすめです。