約10万坪の敷地を誇る東大寺。
大仏殿の北西方向に、天平建築の国宝転害門があります。以前から確認しておきたいと思っていた転害門の盃状穴(はいじょうけつ)を見に行きました。
東大寺転害門の盃状穴。
石段最上段に盃(さかずき)状の穴が彫られています!想像以上にくっきり、かつ丸く彫り出されていました。
盃状穴の謎!再生や豊穣を意味するのか?
なぜ盃状穴は存在するのでしょうか。
再生や豊穣を願って彫られたものとする説もありますが、定かなことは分かっていません。
橿原市の石川精舎跡や三輪山麓の若宮社などでも、同じようなものに出会いました。”これが盃状穴” と断定こそ出来ませんが、少なくともその意図は感じさせます。
若宮社で見たものは、転害門のそれと比べるとやや浅く彫られています。転害門の盃状穴はかなり深く、大胆に刳り抜かれているのが分かります。
東大寺転害門。
東大寺大仏殿は火難に遭い、二度再建されています。その一方で、この転害門は創建当初の姿を今に伝えています。貴重な遺構であり、国宝に指定されます。両翼を広げるような流麗な姿ですが、右脇の門が通用口になっていました。
石段の最上段。
そこにくっきりと人工的な穴が!
転害門の通用口。
この脇門を抜け、東へ行くと正倉院があります。
正倉院の手前には、手向山八幡宮との関係を示す鼓坂が通っています。
見れば見るほど不思議な穴。
謎に満ちた盃状穴ですが、石段の他にも手水石や石燈籠などに見られるようです。
盃状穴を彫る行為は、明治期以降には廃れたそうです。
どんな思いが込められているのか、とても気になりますね。一説によれば、牛頭天王(スサノオノミコト)への厄除祈願の跡とする向きもあるようですが、果たして真相やいかに。
通用口に掲示中の「お願い」。
野良猫の被害が出ているようです。
これはいけませんね、国の宝に傷が付けられたのでは取り返しがつきません。野良猫にエサを与える行為は慎みましょう。
おっ、ここにも盃状穴が!
やや浅いですね。石段のみならず、こんなところにも円形の穴がありました。
転害門の通用口を抜けて、反対側に出ます。
同じように盃状穴を発見します。
転害門の西側、東側両サイドに彫られています。
どちらも最上段にのみ、盃状穴が見られました。
大小様々な盃状穴。
山添村の神波多神社でも見ることが出来るようです。カンボジアのアンコールワットでも無数の穴が確認されています。国境を越えて、よく似た慣習の広がりを感じますね。
こちらは転害門東側の溝石。
足元に目を落とすと、単に円形ではなく、まるで前方後円墳のような穴も確認できました。
盃状穴に近づきます。
二重構造のような感じです。
雨が降れば水も溜まるのでしょう。長い年月にわたって若干の浸食があるのかもしれません。かねてからの宿題であった東大寺転害門の盃状穴。まじまじと見学することが出来、大満足の一日でした。