オオモノヌシの親神とされる素戔嗚(すさのお)。
三輪山麓に素戔嗚神社が祀られていることは意外と知られていません。大神神社の御祭神である大物主命の親に当たる神様です。これはお参りしないわけにはいきませんね。
三輪の素戔嗚神社。
拝殿の手前に結界が張られていました。
磐境に囲まれた2つの磐座が鎮まります。三輪山には磐座信仰が根付いていますが、これも辺津磐座の一つなのかもしれません。
スサノオ崇拝!元気、勇気、優しさの神『ぎおんさん』
素戔嗚神社の祭日は毎月7日のようです。
天照大神の弟神で、暴れん坊のイメージが強いスサノオノミコト。
八岐大蛇伝説で名を残す神様ですよね。後世には悪疫退散の神様として信奉されるようになり、京都の祇園信仰では広く知られています。
素戔嗚神社の拝殿。
拝殿前には注連縄が張られていました。
素戔嗚神社と白山神社の解説文。
素戔嗚神社
当社は三輪明神の御祭神・大国主命の親神様である素佐男命(スサノオ)をお祀りしています。元気、勇気、優しさの神「ぎおんさん」という呼び名で親しまれ、老欅(ろうきょ)の森の中に悠久の昔から、ここに祀られています。
毎月7日が祭日で、1月、7月、10月には大祭が催され、1月の綱掛祭、7月ぎおんさんの夏祭は、特に賑わいます。
白山神社
この地域は古くから加賀白山の信仰も篤く、白山大神を祀り、祭礼は氏神社と併せて祭祀しています。
庚申、愛宕、金毘羅大権現は「歯定さん」といって歯痛に霊験があると信仰されています。
1月7日には綱掛祭が催されるようです。
拝殿右奥にある白山神社の手前にも、太い注連縄が張られていました。ひょっとすると、綱掛祭の名残りなのかもしれません。
白山神社には菊理媛命(ククリヒメノミコト)が祀られています。安倍文殊院の境内にも祀られる神様で、縁結びにご利益があると伝わります。
素戔嗚神社の磐座。
丸いイワクラが二つ、仲良く並んでいます。
四方の注連縄には紙垂が下がり、清浄な空間が保たれていました。
磐座の奥に祀られるお地蔵様。
赤い前掛けは魔除けを意味しているのでしょう。
集会所のような建物もあります。
その前に建つお堂は薬師如来を祀る薬師堂です。
私は三輪小学校の卒業生ですが、毎朝各々分団登校をしていました。地域によってそれぞれ呼び名があったのですが、確か素戔嗚神社周辺に住む児童たちは「薬師堂」の名で通っていたように思います。当時はそういう地名があるのかなぁと思っていたのですが、どうやらこのお薬師さんに由来していたようです。
三輪山中に数多くある磐座。
こうやって山麓にも祀られていることを確認します。
素戔嗚神社の石鳥居。
笹の葉のようなものが鳥居に括りつけられていました。
境内に祀られる庚申・愛宕・金比羅大権現
素戔嗚神社の拝殿右奥にも、幾つかの神様が祀られています。
その中心が白山神社で、庚申大権現、愛宕大権現、金比羅大権現が脇を固めていました。
赤い祠の白山神社が見えます。
御神木に張られる太い注連縄!以前にお参りした際には無かったような記憶があります。この時期ならではのものでしょうか。
生垣のすぐ外側を道が通り、民家が迫っています。
この辺りは細い道が入り組んでいて、初めて訪れる人は ”迷路” を楽しむことができます。いずれも大神神社へ通じており、いつもの参道に飽きた人にはおすすめです。
綱掛神事の跡なのでしょうか。
新年を迎えると、県内各地で似たような祭りが行われます。稲渕の綱掛神事、江包のお綱まつり等々、連綿と受け継がれる伝統行事には見るべきものがあります。
白山神社の右横に巨石が建っています。
おそらくあれが庚申さんですね。
右から庚申、白山、愛宕、金毘羅が並びます。
これらの大権現は「歯定さん(はじょうさん)」と呼ばれ、歯痛に霊験があるようです。
山の辺の道を歩いていると、大和神社の御旅所を通ることになります。その境内にも歯定神社があったことを思い出します。
庚申大権現。
庚申さんといえば、身代わり猿ですね。
素戔嗚神社にも五体の猿が吊られていました。吊るされる数にも意味があるようですが、五体ということで「御縁」を願ったものかもしれません。
石に刻まれる月と日。
宇陀市大願寺のおちゃめ庚申にも「月と日」が彫られていたことを思い出します。
大和の庚申信仰には中心的道場があり、大和郡山市小泉町の小泉庚申堂がそれに当たります。60日に1度の”虫の告げ口”を防ぐという民間信仰ですね。
中国の道教思想に由来する庚申信仰。
人間の体内には、生まれ落ちた時から三尸の虫(さんしのむし)が住んでいると伝わります。この虫は上尸(じょうし)・中尸(ちゅうし)・下尸(げし)の三種類で、それぞれ頭、腹、足にいるようです。
60日に一度巡って来る庚申の日の夜、寝ている間に体から抜け出て天帝にその人の悪行を告げ口して寿命を縮めるのだそうです。そのため、当夜は眠らずに身を慎む庚申待ちという風習が生まれました。
三権現を背にして境内に向き直ります。
ここに庚申大権現が祀られているということは、近隣の人々が素戔嗚神社に集まり、夜を徹して酒宴を開いたのかもしれませんね。
防火の神である愛宕さんが祀られているのも心強い。
愛宕神は神社仏閣の強い味方です。
拝殿前の巨木。
なかなか立派な幹周りです。
二体の狛犬が守護していました。
「ぎおんさん」と親しまれる三輪のスサノオ。
大神神社参詣の際は、是非こちらにも足を延ばしておきたいところですね。
薬師堂の解説文。
正面、南向きの御堂の中に、十二神将の御佛に囲まれてお薬師様が お座りになって、私たちの無事を見守ってくださっています。
毎月8日、村の有志の女性たちによって お祀りされ、1、4、7、10月の8日には、平等寺の和尚の招来を得て、私たち皆の安泰を祈念しています。
十二神将に囲まれた薬師如来。
この構図は新薬師寺の本堂内と同じですね。
社号標の横には「祗園社」と刻みます。
三輪山平等寺の和尚様も定期的に来られているとは知りませんでした。
成願稲荷神社へ続く道。
素戔嗚神社にお参りした後、高宮地区を抜けて成願稲荷神社へ向かいました。
旗飴が配られる初午祭ももうすぐですね。
素戔嗚神社をはじめ、三輪山麓は意外に広いということにお気付き頂けたでしょうか。茅原方面へ行けば、神御前神社や弁天社古墳などもあります。まだまだ広い大神神社界隈を楽しんでみましょう。